弁護士の使命はなにか?じつは弁護士法に定めがある。
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする(1条1項)。
基本的人権の擁護は、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員の義務でもある。憲法99条はこう定める。
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
憲法は統治機構の定めも含め基本的人権を擁護することを目的とするから(三権分立の定めも基本的人権擁護の目的と機能がある。)、憲法を擁護するということは基本的人権を擁護するということである。
じつは基本的人権の擁護・保持は、国民の義務である。憲法12条1文はこう定める。
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。
もっといえば基本的人権の擁護は、国民のみならず人類としての義務でもある。97条はこう定める。
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
信託とは、大切な財産を信頼できる人に託し、目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理してもらうということである。託された人は、善良なる管理者としての義務を負う。
こうして天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員、あるいは、国民は憲法ないし基本的人権を擁護する義務を負っている。弁護士のばあい、さらに義務ではなく、使命であるとされている。
使命とは、与えられた重大な任務。自分に課せられた尊いつとめ。天職の意味である。ミッションの訳語であるから、天与の任務という意味合いもある。
民事事件や刑事事件における弁護士の活動は、一言でいうと、依頼人の権利を守るという仕事である。しかし一般の権利と基本的人権とは意味が異なる。
人権は、国家権力から自由を意味する。したがって、国会や政府が国民の権利を侵害する曲面で意味を持つものである。ただ単に弁護士として仕事をしているだけでは、基本的人権を擁護する活動をしているとはいえない。
残念ながら、必ずしもすべての弁護士が基本的人権を擁護する活動をおこなっているわけではない。一般の弁護士が一般事件のみを引き受け、たいへんな労力な割にはペイしない人権擁護活動を敬遠するのは理由のないことではない。
であるからこそ、弁護士法は、第1条で基本的人権の擁護を弁護士の使命であると定めたのである。 つづく
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