2024年3月8日金曜日

「世界遺産 大シルクロード展」@アジア美術館(4)

 
菩薩座像
馬頭観音


如来像
 
 シルクロードを東へ西へ文物が運ばれた。東から西へは絹や陶磁器が。西から東へもさまざまな文物が。その最大のものはやはり仏教である。仏教東漸。

菩薩座像は河南省竜門石窟近くから出土。唐代のもの。コルセットを着用した女性のようにウエストをしぼった姿が印象的。右脚をおろし、豪華な装飾品をつけている。優雅。インドのグプタ美術の影響である。

仏像というのはぶっちゃけ偶像崇拝だ。エホバ神がモーゼにさずけた十戒でも、偶像崇拝は禁止されている(旧約聖書、出エジプト記)。映画「十戒」では、金の子牛像を崇拝した罪深き人々は割れた大地の間に落ちていった。

旧約聖書をベースにしているユダヤ教、イスラム教は偶像崇拝を禁止し、キリスト教ではカトリックではゆるやか、プロテスタントでは厳格であろうか。

仏教でも、もともとは仏が人間の姿で表現されることはなかった。菩提樹、仏足石、法輪などで象徴的に表現された。星の王子さまで言われるとおり、大切なものは目に見えない。

それに畏怖の感覚もあろう。こういう感覚は古代から日本でもある。『源氏物語』が読みづらいことの一因として、登場人物の呼び名がくるくる変わることがある。本人の名前を呼ぶことがはばかられるため、官職名で、女性のばあいさらに親の官職名で呼んだりするからだ。

話を戻す。じゃいつころから、どこで、仏が人の姿に造形されるようになったのだろうか。それは、♪そこにいけばどんな夢もかなうという~遙かな世界、ガンダーラである。

ではなぜ、ガンダーラでは仏が人間の姿に造形化されたのか?この答えは世界史の雄大さを実感させてくれる。キーマンは、あのマケドニア王アレクサンドロス大王である。

ガンダーラはインダス川上流部に位置している。この地域は、アレクサンドロス大王が大東征をおこなった東端にあたっている。

東征後、西はギリシア・エジプトから東はインダス側流域に至る大帝国が建設された。域内では東方の文化と融合した新しいギリシア風文化が普及した。いわゆるヘレニズム文化である。

東方の文化というばあい、ここでは仏教である。それがギリシア文化と融合した。ギリシアでは神々が人の姿で造形されている。仏も人の姿で造形化されたことは必然である。

ガンダーラの仏がどこかギリシアの神々の面影を残しているのはこのためである。しかし、時代が下ってグプタ朝になると様式のインド化が進み、繊細・優雅な表現となった。こうして造形化された仏たちはシルクロード上を東へ向かった(東漸)。

むかしから観音様のなかに馬頭観音様がいらっしゃることに違和感をおぼえていた。しかし、仏教がシルクロードを東漸してきたのであれば、その間、騎馬民族がひごろお世話になっている馬が仏になるのも自然な流れかなと思う。

シルクロード各地の遺跡にのこる仏たちは、日本の仏たちのご祖先さまにちがいない。みな、法隆寺の百済観音、釈迦三尊像や、興福寺の仏頭にそっくりでいらっしゃる。

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