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「ご立派な観音さまですね。」・・
顔と、体躯の一部は胡粉でも塗ったように白くなっているが、あとは漆地の黒さで覆われている。顔はゆたかできゅっと緊まって、意志的であるが、いささかも威圧感はない。・・
頭に戴いている十一の仏面はいずれも小さく、そのためか、天冠台から上は本当に冠を戴いているように見える。そして瑶珞をたくさん胸もとに垂らしているところなどは、やはり咲く花の匂うような天平の貴人が一人、そこに立っている感じである。ひたすら気品高い観音像である。
「もとは、ここも大きな寺だったようです。織田氏の焼打ちに遇って、寺は焼けてしまい、この観音さまだけが助かりました。誰かが火の中から救い出したのでしょう、背中に火傷の跡があります」
※引用は能美舎刊から。
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