2023年2月6日月曜日

誠実な先輩経営者の肖像

 

 先週は、高校同級生がSNSに投稿した氷の写真から発想した「一片の氷から世界を見る」だった。最後は『博士の愛した数式』のエンディングで流れたブレイクの「無垢の予兆」で締めくくった。

氷の写真の投稿者から「今週のブログ、本日の見事な着地に感動しました」とお褒めの言葉をたまわった。ありがとうございます。

忘れがちだが、ブログもコミュニケーションの一つであることに違いない。こうしたリアクションをいただくことで、それを思い起こさせてもらえる。そしてなにより励まされる。

おなじころ、『若い芸術家の肖像』(ジョイス著・丸谷才一訳・集英社文庫)を読了した旨のメールをいただいた。就職情報誌などを発行する会社を経営されている先輩経営者Sさんから。何千日も毎日走り続けていることで有名な鉄人経営者である。

話は2年前にさかのぼる。年2回ちくし法律事務所が発行するニュースの新年号にこう書いた。

 「ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を1年がかりで読んでいます。いま3回目が終わったところ。1回目、さっぱりなんのことやら分からない。2回目5%ぐらい、3回目10%くらい分かったような気がする。とにかく1文ごと、1行ごとに謎が仕掛けられている。難しすぎて自分だけで謎ときをしようとしても、まったく歯がたたない。参考書(つまり、解答例集)3冊を片手に少しずつ読み進める。なるほど、なるほど、そうなのかー。めちゃくちゃスリリング、めちゃくちゃ面白い。主人公はわれわれ読者。さすが20世紀の最高峰、そういう本です。」

これに対し、Sさんからお尋ねのメールがこうあった。

 「あけましておめでとうございます。本年もよろしくおねがいします。
さっそくですがニュースレターちくしを拝読させていただいてます。
ジェイムス・ジョイスのユリシーズの記事に興味を持ったのでメールを差し上げました。・・それで質問です。
日本語訳ですか?
貴殿が3回で10%なら、私はどうなるんだろう。
あと何回読まれるつもりですか?
解答例集というのが別売であるんですか?
すみません、お時間のあるときにでも教えてください。」

この質問に対し、『ユリシーズ』を読破するうえで役にたつ参考書を3冊ご紹介した。その中の一冊がジョイス初期の自伝的小説『若い芸術家の肖像』である。

Sさんはこのアドバイスにしたがい、同書を読破されたようだ。といってもこの2年間ずっと読み続けていたわけではなく、最近病気療養をされたのでその機会に取り組まれたらしい。

いろいろと尊敬しどころ満載の先輩であるけれども、後輩の事務所ニュースを読み、メールで感想をよせ、それに対する返信メールにも答える、それも2年がかりで実践する。その誠実な姿勢にあらためて敬意をおぼえた。

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