2023年2月17日金曜日

赤後寺の十一面観音

 
 架山は、その後も、琵琶湖畔の十一面観音を訪ね歩く。大三浦がいることもあれば、他の人と同行することもある。

四体目は赤後寺(日吉神社)の十一面観音(重文)。やはり琵琶湖の北岸で、先の渡岸寺の十一面観音の近くである。

https://kitabiwako.jp/spot/spot_931

手間かもしれないが、アドレスをクリックして、それぞれの仏さんを拝んで頂きたい。そのうえで、井上靖の文章を読んでいただきたい。一口に十一面観音といっても、井上が描き分けたように千差万別である。

できれば自分が撮影した写真を掲載したいところ。だが、自分が訪ねたのはもう20ほども昔であるし、拝観できたとしても撮影はできないところがほとんどであるから、当該寺院や観光協会の写真をお借りするしかない。

さて、本仏について『星と祭』にはこう書かれている。

 架山がそに見たものは、今まで拝んで来た十一面観音とはまるで違ったものであった。厨子の中には二つの像があった。
「右手が十一面千手観音さま、左手が大日如来さまでございます」
 架山は口から、すぐにはいかなる言葉も出すことはできなかった。十一面観音は頭上の仏頭全部を失っており、左手七本、右手五本の肘から先の部分を尽く失っている。無慚な姿と言うほかない。・・

「このようなお姿ですが、お顔はなかなかご立派でございます。先年専門家の人が見えまして、冴えた彫りの美しさを褒めておられました。」・・
 
「賤ヶ岳の合戦の時お堂に火がかかりまして、その時土地の人が肩に背負って救い出し、近くの赤川という川に沈めて、戦火の鎮まるまで匿しておいたということが伝えられております。そういう過去を持ちでございます」

・・現在この十一面観音像がここにあるということは、これを尊信したこの土地の人々の手で、次々に守られ、次々に伝えられて、今日に到ったということであろう。・・

※引用はいずれも能美舎刊から。

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