2021年12月8日水曜日

弁護士費用は相手が持つべき!?

 いつもしょうもないことばかり書いていますので、たまには弁護士みたいな話を書こうと思います。


【ご相談例】

 資産運用のため、不動産賃貸を始めようと思い立ったAさん。駅前で立地のよい土地を購入することに決め、不動産業を営むB社と代金5000万円で売買契約をして、手付金500万円を支払いました。

「さあ、これからここにアパートを新築して賃貸業を始めるぞ。」と思った矢先、B社が営業を停止し、代表者は行方不明に。本当なら、B社が測量などをした上で、契約から2か月後に登記を移し、残りの代金を支払う約束でしたが、測量もされず、登記を移す約束も反故にされました。

 諦められないAさんは、泣く泣く自分の費用で弁護士に頼み、裁判をして判決をとり、登記を自分に移しました。

Aさん「もともとB社が約束を破ったから、自分は弁護士に頼んで裁判をしないといけなくなった。弁護士費用はB社が負担するのが筋ではないでしょうか?」



「相手が悪いから裁判になった。弁護士費用も相手が負担してほしい。」というAさんのお気持ちはごもっともです。【ご相談例】のような場合、弁護士費用を相手に負担してもらうことはできるのでしょうか。

 まず、法律上は、裁判をするために必ず弁護士を付けなければならないという決まりはありません。また、裁判に負けた方が弁護士費用を負担するというルールもありません。そのため、弁護士費用・報酬を相手に損害賠償請求できるか、ということは古くから議論されてきました。

 回答としては、大きく2つに分けられます。①契約(約束)のトラブルか、②それ以外の事故や事件(例えば交通事故)か、の2つです。

 ②の場合、事案の難しさや請求額などに応じて、相当な範囲で弁護士費用・報酬を相手に請求できるとされています。これは、依頼した弁護士に実際に支払った報酬額ではなく、あくまで「相当な」範囲の金額です。
 例えば、交通事故の事案などであれば、裁判をした場合、請求認容額の10%が弁護士費用相当額と認められることが一般的です。

 問題は、【ご相談例】のような①の場合です。
 判例は、このような場合、弁護士費用・報酬を相手に損害賠償請求することを認めない傾向にあります。最近の判例で、【ご相談例】のような事案において、弁護士費用の損害賠償請求を否定しました(最小判令和3年1月22日・集民265号搭載予定、089963_hanrei.pdf (courts.go.jp))。

 それでは、Aさんはどうすればよかったのでしょうか。
 弁護士費用を請求できない理由として判例があげているのは、契約しようとする人は、相手が約束を反故にする可能性を考慮して、契約の内容を検討したり、そもそも契約しない選択をすることができる、ということです。
 要するに、「いつ礫かれるか分からない交通事故と違って、契約はトラブルにならないように事前に工夫できたでしょう。」ということです。

 そういうわけで、Aさんのように、裁判せざるを得ない状況で弁護士にご相談に来られると、「弁護士費用を相手に請求することはできません。」という回答になります。
 もっとも、契約をするかどうかという局面でご相談いただければ、契約内容の確認や契約書の作成など、弁護士がお手伝いできることがあります。

 弁護士というと、「裁判する人」のようなイメージがありますが、相談だけで解決する場合もあります。何にせよ、早めにご相談ください。

【回答】
 契約トラブルは、相手に弁護士費用を請求できないことがほとんど。トラブルになる前に、早めにご相談を。


・・・って、最後までマジメに書いてしまった。あ~あ、オチ求む。


富永

 




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