先週末は、和歌山での講演依頼を受けたので、和歌山、大阪を周遊した。新大阪に前泊し、金曜の朝、天王寺にある大阪市立美術館へむかった。
「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」を鑑賞するためである。高校の恩師と九州大学の美術教授になった同級生がSNSに投稿していたので、行ってみようという気になった。高校の恩師はまた非常に混雑していたとも報告していた。
NHKみんなのうたに大貫妙子の珍妙で楽しい「メトロポリタンミュージアム」という曲がある。聞いたことはないだろうか。♪赤い靴下でよければかたっぽあげる・・・という、あれである。
メトロポリタン美術館展ははじめてではなく、これまでにもなんどか来日していると思う。コレクションが幅広く多数にのぼり、来日の都度作品にバリエーションをもたせているので、なんど来ても新鮮である。
いまどきだし、コロナ禍でもあるので、ネットで事前に予約・チケット購入ができる。金曜の朝一は9時30分からである。前日、これを予約・購入した。
ホテルで朝食を食べ、天王寺に向かったら8時55分に美術館に着いた。「予約をされていないお客様」の列にはすでに一人待っていただけである。こちらは「予約をされているお客様」の列の先頭であった。
寒い朝だった。順番待ちをしているところからは通天閣が見えた。その後、列はどんどん伸びていった。予約をしていて、よかった。
開館とほぼ時を同じくして和歌山で震度5の地震が発生した(らしい)。和歌山出張を知っていた秘書さんや友人から安否確認が複数きた。
しかし、なんと自身はこの地震に気づかなかった。大阪の震度は2であったし、入館に全集中していたからだ。
普通、美術展では主催者の挨拶や、ルネッサンス芸術とは、バロック芸術とはなどという解説も丹念に読み、学習しつつ鑑賞する。
この日は後ろの時間が切れていた。午後1時から和歌山で講演なので、10時30分には美術館を出て、55分の電車に乗らなければならなかった。
混雑も気になったので、これらはネットで事前に学習して、現地では読み飛ばした。そしてマスターピースを中心に鑑賞した。
どれか一点といわれれば、セザンヌの「リンゴと洋ナシのある静物」を挙げておこう。
中世の絵画はキリスト教カトリックの支配下にあり、キリストの神聖を強調するため、平板かつ非現実的だった。
ルネッサンス以降「西洋絵画の500年」というのは、これをいかに立体的、現実的に表現するかの歴史である。遠近法や光の表現など数々の革新がなされていった。
セザンヌはあまりに革新すぎて同時代人には理解されなかった画家である。人生には苦労したであろうが、画家としての名誉を得ることができた。
彼はピカソ、ブラックらのキュビズムに影響を与えた。キュビズムとは立体派である。彫刻はもともと3次元の立体であるが、絵画は2次元である。2次元の画面に3次元の物体や空間を表現するにはどうするか。
セザンヌはどうしたか。手前の机は斜めっているし、背後の壁は波打っている。遠近法による忠実な描写からはほど遠い。
しかし、中央に並んだリンゴと洋ナシは、なぜか圧倒的な存在感を放っている。手にとって食べられそうだ。いちどご覧あれ。
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