2021年11月9日火曜日

砂の中の銀河


  わが事務所の代表である稲村晴夫弁護士(以下、弁護士という。)が古希を迎えようとし、事務所開設40周年もちかいので、記念に弁護士の本づくりをしている。

まず弁護士から若手弁護士にむけた連続講座を6回開いた。それを録音・反訳したものを第1部とした。

それにこれまでいろいろとご指導いただいた諸先輩や親しくお付き合いいただいた知人・友人のかたがたに寄稿していただいたものを第2部とした。

そして事務所開設以来の写真や大学時代の友人のかたが送ってくださった写真など100枚以上、ビジュアルも充実させようと思う。

現在、それら原稿や写真はでそろったので、出版社に依頼してゲラをつくってもらっている。年内には第一稿ができあがってくる予定だ。

残る問題はいくつかあるが、大事なのはタイトルだ。『地域弁護士として生きる』というのが固い。しかし、あまり詩的でない。なにかよいタイトルはないものか。

弁護士は居酒屋で飲み、カラオケで歌うのが大好きなので、十八番の歌詞になにかよいものはないものか。

『一日二杯の酒を飲み』、『マイクが来たなら微笑んで』(いずれも河島英五の『時代おくれ』から)などは人柄を彷彿とさせてよいと思うのだが、弁護士は気に入らないようだ。

以前から弁護士は若手弁護士にたいし『地上の星』になれと発破をかけている。それなら『地上の星』からなにかよいタイトルはないものか。

『風の中のすばる』、『砂の中の銀河』などはどうか。よいかんじだが、すこし洒落すぎだろうか。

中島みゆきから著作権侵害で訴えられないだろうか。ま、それならそれで話題性になってよいかもしれない(笑)。人類の文化は模倣と逸脱から生まれるものだから。

「砂の中の銀河」という歌詞もオリジナルだろうか。たとえば、ウイリアム・ブレイクの有名な『無垢の予兆』の冒頭はこうだ。

 一粒の砂に世界を見、
 一輪の野の花に天を見る。
 汝の掌に無限を捉え、
 一時の中に永遠を見よ。

中島みゆきがブレイクの一節からインスピレーションをえたのだとしても驚かない。むしろ尊敬する。

そもそもブレイクの世界観でさえ、かれのオリジナルだろうか。華厳経は「世界を太陽の顕現であるとして、かすかな塵の中に全世界を映し、また一瞬の中にを永遠を含むという一即一切、一切一即の世界観が根本教理である」という(井上靖『天平の甍』7頁注)。

中島みゆきの歌詞が華厳の滝の震動のように心に響くのは、われわれの心に仏教が深く根ざしているからだろうか(こんなことを書くと、ブレイクはどうなんだと訊かれそうだけれども、それはまたの機会に)。

2021年11月8日月曜日

100万回生きたねこ


  昨日は立冬。お仲間と九重黒岳原生林の紅葉を愛でに。終日良いお天気にめぐまれた。季節のめぐりははやい。秋が行くのか、冬が立つのか。

『100万回死んだねこ』のオリジナルタイトルは、『100万回生きたねこ』。百万回生きるには、百万回死なねばならない。おなじ硬貨の裏表。だけど、百万回死ぬより、百万回生きたい。子どもの読み聞かせをなんどもしたものだ。

①恩田陸の『なんとかのカーニバル』は、『夜のピクニック』。恩田陸は怪異物語のようなものもおおいから、別のものを思い浮かべた。正解を聞くと、なんだというかんじ。でも大好きな作品。

②『おい桐島、お前部活やめるのか?』は、『桐島、部活やめるってよ』。これはあまりにも印象的なタイトルなので、みなさんわかったよね。

③カズキ・イシダの『わたしを探さないで』は、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。これも大好きな一冊。それでも『わたしの手を離さないで』と間違えてしまう。

④ドラマ化した『私、残業しません』は、『わたし、定時で帰ります』。おなじ意味だけれども、対決局面でいうセリフとしては、後者のほうが角が立ちにくいかもね。あれ?漱石先生は「智に働けば角が立つ」とおっしゃってるな。

⑤伊坂幸太郎の『あと全部ホリディ』は、『残り全部バケーション』。これはもうほぼ正解。でもやはり伊坂先生のタイトルのほうが、ユーモアのなかに格調があるんだな。

⑥ねじまがったクロマニヨンみたいな村上春樹の本は、『ねじまき鳥クロニクル』。ギギギギ。カササギが時をまわすってやつ。

⑦フォッカッチャの『バカロマン』は、ボッカッチョの『デカメロン』。これを間違えた人は料理好きで音楽センスのあるかたとお見受けいたす。

⑧『ひやけのひと』は、『火宅の人』。檀ふみのお父上の作。大学に入ってすぐ、堀田善衛をほったぜんべぇと言って笑われたことを思い出す。

⑨『ストラディバリウスはこう言った』は、『ツァラトゥストラはこう言った』。ツァラトゥストラはゾロアスターのドイツ読み。作者はニーチェだから。大学1年のドイツ語テキストはニーチェだった。ニーチェはワーグナーと親交があり、『音楽の精神からのギリシャ悲劇の誕生』という本が第1作。『ストラディバリウスはこういった』というタイトルもそれほど外れていないかも。

⑩『これこれちこうよれ』、これを正解した人はいないだろう。正解は『日々是好日』。茶道をはさんで黒木華と樹木希林のかけあいが面白かった。その背後にかけられた掛け軸の禅語が出典。一日一日を大切に生きよう。たとえ100万回生きようとも。

2021年11月5日金曜日

100万回死んだねこ


  あの人だれだっけ?燃えよ剣で土方歳三役の人、大河では黒田官兵衛やってた人、ジャニーズで、v6で、おかおか、岡田くん、岡田准一くん!

歳をかさねると、名前がでてこない。あたまのなかにはその人の顔やイメージが浮かんでいるのに。

うちの母は歳のせいだといつも悔やんでいる。でも記憶力の減退を悔やんでもしかたがない。歳をかさねると名前がでてこないことになにか意味があるのだろう。

などと思っていたら、『100万回死んだねこ 覚え間違いタイトル集』(福井県立図書館著・講談社刊)を貸してもらった。

図書館の司書をしていると、利用者から問い合わせがくる。あの本、あの本。司書としては、どんな本ですかと訊いて、タイトル名、著者名、出版社名等を推理していくことになる。

この本は、そのうち、利用者がタイトル名を覚え間違っていて爆笑だったものが集められている。そうそう。若い人だって、覚え間違いならあるよね。

以前ネットで読んだことがある。話題になったので、本になったのだろう。今年の10月20日発行、最新刊だ。

本のタイトルとなった『100万回死んだねこ』のオリジナルは分かるかな?まぁ、言っていることは同じなんだけど、ちょっとちがう。正解は来週月曜ということで。

全部紹介したいところだけれど、著作権侵害で訴えられたら困るので、みなさんが本を買いたくなる・読みたくなる程度の紹介にとどめたい。

10個くらいなら許されるかな。じぶんが読んだことのない本で、オリジナルのタイトルじたいが爆笑もののものもあるが、それは外そう。フェアではないから。

オリジナルをじぶんが読んだことがあり、かつ、覚え間違いが面白かったもの10選といきたい。正解はやはり来週月曜。

①恩田陸の『なんとかのカーニバル』ってタイトルだったと思うんだけど・・・

②探しています。『おい桐島、お前部活やめるのか?』

③カズキ・イシダの『わたしを探さないで』

④ドラマ化した『私、残業しません』

⑤伊坂幸太郎の『あと全部ホリディ』かな?

⑥ねじ曲がったクロマニヨンみたいな名前の村上春樹の本

⑦フォカッチャの『バカロマン』

⑧『ひやけのひと』

⑨『ストラディバリウスはこう言った』

⑩『これこれちこうよれ』

さて、わかるかな?

2021年11月4日木曜日

「壬」?


 きのう、テレビで「学校に行こう」やってたね、昔みていた、解散だからかな、V6もみな立派なおじさんになったなどと事務局と雑談をしていた。 

すると、隣席の弁護士が訊いてきた。「壬」って、なんと読む?壬生義士伝の壬だから、「み」だろ。

きょとんとしているので、壬生菜、壬生野菜の「み」だろといってみる。なおきょとんとしている。京都で学生生活をおくったことがあるのだから、京都の壬生は知っているだろう?ぼんやりとわかったような顔をする?

壬生義士は、新選組の前身こと。新選組が京都にきた際、壬生に屯所があったため。浅田次郎の小説に、吉村貫一郎(盛岡藩脱藩)を主人公にした『壬生義士伝』がある。映画は中井貴一主演。南部訛りが似合う役だった。

司馬遼太郎の小説は『燃えよ剣』。ちょうどいま、映画でやっているところ。「あの人」が主演。土方歳三役。

「あの人」、だれだっけ、黒田官兵衛やってた人。V6の。岡田准一くんでしょ。そうそう。衆知を集めて、ようやく正解にたどりつく。さいきんのパターンだ。

せっかくの映画だから観てきたら、と勧めた。人に勧めた以上は、自分も観ておかないとと思い、観てきた。

う~ん。岡田くんはかっこいいし、原作に忠実な仕上がりだとだけ言っておこう。剣と剣ががきん、がきんとぶつかると、金色の火の粉が飛び散る映像効果がおもしろかった。

2021年11月3日水曜日

人間テトリスの行方

 

福岡は交通の便がよいです。

それに甘えて、いまだにペーパードライバーの私。

裁判所などに行くときは、基本的に電車。西鉄電車と福岡市営地下鉄を乗り継いで行きます。

若いし遠くないので通勤は徒歩ですが、徒歩「通勤」が徒歩「痛筋」に感じるような弁護士おじさんになったら、ペーパードライバー講習にでも行こうかと思います。


電車内では、基本的に読書。でも、疲労困憊モードのときは、ぼけーっとしています。

で、ぼけーっとして何をしているかというと、人間テトリス。


人間テトリス、説明します。


西鉄電車の車両の半数くらいと、福岡市営地下鉄の座席配置は、近江鉄道と同じです。

と、言っても、滋賀県民にしか伝わらないので一応説明すると、進行方向に対して座席が横向きで、8人がけくらいの座席配置です。


電車内で多いのは、スマホを見ている人。

最近では、スマホを見ている人が多くて、週刊誌が電車内の中吊り広告から撤退するなんて話もよく聞きます。

人がスマホを動かしているのか、スマホが人を動かしているのか・・・。


それはさておき、人間テトリスの話に戻ると、

8人がけ座席に座る人が、全員スマホを操作している箇所を車両内の見える範囲で探す、というものです。

同じように一列揃える、ということで、人間テトリス。

駅につくごとに人が入れ替わり立ち替わりしますから、座った人で一列揃うかを見る、という暇つぶしです。


先日も、電車内の車両入口付近に立ちながら、人間テトリスをしていました。

私の近くに、福岡第一高校のバスケ部の学生たちが立っていました。

駅につくと、席に座っていた人たちが何人か立ち上がり、それを見た高校生が座席に向かいます。


さあ行け、高校生。座って存分にスマホをいじるがよい、

と思いながら見ていると、杖をついた年配の男性が乗車してこられました。

それを見た、高校生たち、回れ右をして元の立ち位置へ。声をかけずに座席を譲っていました。

偉いぞ高校生。一列揃わなかったけど、弁護士のおじさん、もとい、弁護士のお兄さんは嬉しいぞ。


富永



2021年11月2日火曜日

位山登山記(2)ー世界は美しいものに満ちている


 







 スキー場のゲレンデトップからひと登りで、なだらかな山道に。広葉樹がおおく、あかるい山だ。名前とちがい、くらい山ではない。神々しくも、気持ちがいい。

クマの爪痕とおぼしき、木を削った跡があった。ひょえー。クマがいるということは豊かな森であるしるしである。でもあわてて熊鈴をつける。

山中にはところどころ巨石があった。『君の名は。』のモデルとされるゆえんである。右側から巨石群林道が合流してくる地点に、その名も天の岩戸があった。いまにもアマテラス大神があらわれそうだ。

山頂ちかくに北西方面がひらけた展望広場があった。ダケカンバが絶妙な角度で傾いている。コローの画のような美しい構図だ。そして霊峰・白山が輝いている。

山頂付近は、サラサドウダンの群生地にもなっている。花期は6月だそうだ。可愛い花がいっぱいついて、きっと美しいだろう。

蒼空には彩雲。見ている間に、消えてしまった。なにかのメッセ―ジのようだった。世界は美しいものに満ちている。またよいことがありますように。

2021年11月1日月曜日

位山登山記(1)ー君の名は。

 






 
 能郷白山のつぎは、位山(くらいやま)1529mをめざした。イチイの木が群生し、これを朝廷に献上し、位をさずかったことが名の由来という。山頂部に巨石群がある。その名も天岩戸をはじめ、神の山らしい。

ある会合で、誰かが、『君の名は。』のモデルとなったのは位山だと言っていた。それ以来、いちど訪れてみたいと思っていた。ようやく念願がかなった。

樽見鉄道に乗って大垣に戻った。そこから岐阜へ。岐阜から高山本線に乗った。特急飛騨は飛騨川に沿って北上した。

山峡に入ると、飛水峡だ。ここにはチャートと呼ばれる岩がある。大学受験のときにお世話になった受験参考書とおなじ名前だ。固い層と柔らかい層が幾重にも積み重なっている。岩盤も受験も積み重ねが大切だ。

なんと、ここから1400Km離れたハバロフスクでもおなじ岩がみられる。ということは、どういうことか。日本列島はもともと大陸の一部だった。それが、太平洋プレートが沈みこむ際の引きずりこみ作用により、大陸から引きちぎられたものだ。そう考えられている。・・・とBS-NHKのジオジャパンという番組で紹介されていた。

などと考えているうちに下呂温泉に着いた。若い女性グループがおりていく。ついついついていきそうになる。が、なんとか踏みとどまった。

日本二百名山には小秀山がある。御嶽山がちかくで望めるよい山だ。むかしこの山に登る際に下呂温泉に泊まったことがある。知人の名古屋の弁護士もいちおしのいいお湯だ。が、こんかいはここで降りるわけにはいかぬ。

飛騨高山までがまんして降りた。ここで宿泊だ。春に観光するにはよいところだが、こんかいはおあずけだ。

翌日、ホテルの窓から乗鞍岳をのぞんだが、霧に隠されていた。残念。きょうは曇なのか。

登山口はその名もモンデウススキー場だ。つまり、マウント・ゼウス。神の山。太平洋と日本海の分水嶺になっている。

ゲレンデに沿って登った。ガスが薄れていく。どうもガスは高山盆地を覆っているだけで、山々はだいじょうぶのようだ。

ゲレンデを登り切ったところが1合目だ。いきなり北アルプスの展望がひらける。もう雪化粧をしている。美しい・・・。わーい、来てよかった。しばしときを忘れ、風景に見とれる。

ところで「君の名は?」。それぞれの山の名は?

南のほうは雲がおおい。その合間に、木曽の御嶽山。山から雲が湧き出ている。噴煙なのか、雲なのか分からない。じつはこんかい御嶽山→位山の計画をたてた。ところが、御嶽山は10月中旬までという情報に接し、能郷白山に計画を変更していた。当初の計画どおりであれば、アイゼンが必要だったかもしれない。

北に目をうつすと乗鞍岳。左3分の1あたりの鞍部が畳平、右から二つ目の雲に半分かくれているピークが剣が峰である。夏場は畳平までバスで行け、そこから剣が峰に登るのが一般的だ。冬場は向こう側の乗鞍高原から登りあがらなければならない。右下が野麦峠だ。ああ。

その北が槍穂高連峰だ。三層の雲海上に輝いている。右側が穂高連峰。右から前穂、吊り尾根、奥穂、北穂だ。左側が槍の山塊。左から槍、大喰、中、南。中央が大キレット、残念ながらガスがかかっている。

その北に笠ヶ岳。とても美しい。だが、これはちょっと意外な姿だ。信州側からだと大きな山塊だが、こんなに尖がってはいない。さすが飛騨の名峰と呼ばれるだけあって、飛騨側から見るべき山だろう。左端には今夏登った双六が見えている。

その北には黒部五郎から薬師岳への稜線が優美。薬師にも、黒部五郎にも登ったことがあるが、この稜線を縦走したことはない。ぜひ一度縦走してみたい。

さらに北には薬師、立山、劔(中央)、大日まで望むことができた。こんな遠くからでも、劔がピラミッドのようであることが素晴らしい。

御嶽から劔まで北アルプスの百名山がほとんど見えている(信州側の一部が見えていないだけ。)。ぜいたくだ。