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2023年11月30日木曜日

夜のウォーキング

 

 オマージュ、あるいはリスペクト。文学や芸術において、尊敬する作家や作品に影響をうけ、それを踏まえた作品を創作することをいう。ただし、踏まえて創作した作品のできばえがよいものにかぎる。できが悪ければ単なるパクリである。だからといって、なにを遠慮する必要があろう。

きのうのわがブログのタイトルは「マリンワールドよ、永遠なれ」。もちろん、スーザの有名な行進曲「星条旗よ、永遠なれ」を踏まえている。

https://www.youtube.com/watch?v=V-CCQ_p6XHE

むすびの文は「海獣たちのいるところ、水族館」。これも、モーリス・センダックの代表作の絵本『かいじゅうたちのいるところ』を踏まえている。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=537

そして、きょうのタイトルは、もちろん恩田陸の『夜のピクニック』を踏まえている。本屋大賞受賞作。

https://www.shinchosha.co.jp/book/123417/#:~:text=%E9%AB%98%E6%A0%A13%E5%B9%B4%E7%94%9F%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%BE%8C,%E3%81%A0%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%8B%E3%82%89%E9%A9%9A%E3%81%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

さいきん夕食後、街を徘徊している。1日1万歩以上を歩くためである。例の職場内のウォーキンググループ加入がきっかけ。

およそ10分で1000歩、1万歩となれば100分歩かなければならない。通勤時だけで1万歩は無理だ。足りない分は夕食後に歩く。

夜だからリスクもある。暗くて段差や溝がわかりづらい。暴漢におそわれる確率もたかいだろう。でもそれを上回るメリットもある。

街に詳しくなる。いままで通過するだけだった十字路を曲がってみたり、脇道に入ってみたり。その結果、なじみのところにでてみたり。この道はここに通じていたのかなど。

9時-5時の仕事ではない職業の人たちに敬服する。飲食業はもちろん、歯科、整体、郵便配達、高校教師・学生、役場職員などの仕事は夜8時ころでもやっておられる。仕事帰りのサラリーマンは助かるだろうけど、たいへんだろうな。

車は多い。救急車にはよくでくわすが、パトカーは昼間よりずっとすくない気がする。

ご同輩の人たちがいる。走っている人たちがいる。歩いている人たちもいる。一人で走っている人もいれば、カップルで歩いている人たちもいる。イアフォンで音楽を聴いていたり、スマホの画面をながめながらの人たちは、ちょっと心配である。

家々の窓からオレンジ色の灯りがもれている。一家団欒なのだろう。ときには肉じゃがやすき焼きのにおいが流れ出てくる。

夜の空は真っ暗とはかぎらない。ダークブルーの空にうすい雲がたくさん浮かんでいたりする。山影もくっきりみえている。冬にむかい、空気もピンと澄んでいる。よしあと3000歩だ。がむばろう。

2021年11月8日月曜日

100万回生きたねこ


  昨日は立冬。お仲間と九重黒岳原生林の紅葉を愛でに。終日良いお天気にめぐまれた。季節のめぐりははやい。秋が行くのか、冬が立つのか。

『100万回死んだねこ』のオリジナルタイトルは、『100万回生きたねこ』。百万回生きるには、百万回死なねばならない。おなじ硬貨の裏表。だけど、百万回死ぬより、百万回生きたい。子どもの読み聞かせをなんどもしたものだ。

①恩田陸の『なんとかのカーニバル』は、『夜のピクニック』。恩田陸は怪異物語のようなものもおおいから、別のものを思い浮かべた。正解を聞くと、なんだというかんじ。でも大好きな作品。

②『おい桐島、お前部活やめるのか?』は、『桐島、部活やめるってよ』。これはあまりにも印象的なタイトルなので、みなさんわかったよね。

③カズキ・イシダの『わたしを探さないで』は、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。これも大好きな一冊。それでも『わたしの手を離さないで』と間違えてしまう。

④ドラマ化した『私、残業しません』は、『わたし、定時で帰ります』。おなじ意味だけれども、対決局面でいうセリフとしては、後者のほうが角が立ちにくいかもね。あれ?漱石先生は「智に働けば角が立つ」とおっしゃってるな。

⑤伊坂幸太郎の『あと全部ホリディ』は、『残り全部バケーション』。これはもうほぼ正解。でもやはり伊坂先生のタイトルのほうが、ユーモアのなかに格調があるんだな。

⑥ねじまがったクロマニヨンみたいな村上春樹の本は、『ねじまき鳥クロニクル』。ギギギギ。カササギが時をまわすってやつ。

⑦フォッカッチャの『バカロマン』は、ボッカッチョの『デカメロン』。これを間違えた人は料理好きで音楽センスのあるかたとお見受けいたす。

⑧『ひやけのひと』は、『火宅の人』。檀ふみのお父上の作。大学に入ってすぐ、堀田善衛をほったぜんべぇと言って笑われたことを思い出す。

⑨『ストラディバリウスはこう言った』は、『ツァラトゥストラはこう言った』。ツァラトゥストラはゾロアスターのドイツ読み。作者はニーチェだから。大学1年のドイツ語テキストはニーチェだった。ニーチェはワーグナーと親交があり、『音楽の精神からのギリシャ悲劇の誕生』という本が第1作。『ストラディバリウスはこういった』というタイトルもそれほど外れていないかも。

⑩『これこれちこうよれ』、これを正解した人はいないだろう。正解は『日々是好日』。茶道をはさんで黒木華と樹木希林のかけあいが面白かった。その背後にかけられた掛け軸の禅語が出典。一日一日を大切に生きよう。たとえ100万回生きようとも。

2011年5月18日水曜日

  『謎解きはディナーのあとで』



 (ヒカゲツツジ@尾鈴山。光を求める植物でありながら
 なぜか、名前のとおり日陰を好む。そして黄色の花を咲かせる。)

 『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉・著 小学館)読みました。
 今年の本屋大賞です。

 個人的には2位の『ふがいない僕は空を見た』(窪美澄・著 新潮社)
 のほうが好ましく思いますが、全国の書店員さんが撰んだ結果ですから。

 本屋大賞の過去の受賞作は下記のとおりで
 その結果に照らし、おおむね信をおいています。

 2004年『博士の愛した数式』(小川洋子・著 新潮社)

 2005年『夜のピクニック』(恩田陸・著 新潮社)
  
 2006年『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
 (リリー・フランキー著 扶桑社)

 2007年『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子・著 講談社)

 2008年『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎・著 新潮社)

 2009年『告白』(湊かなえ・著 双葉社)

 2010年『天地明察』(冲方丁・著 角川書店)

 もちろん、「ノルウェイの森」に出てくる永沢さんのように、死後30年
 を経ていない作家の本は手にとらないという読書法もあるでしょう。

 しかし、ここに並んだ作品たちを読まないという人生は
 いかがなものかと思います。

 ことに私は「夜ピク」の大ファンなので
 その点だけでも、永沢さんにしたがうわけにはいきません。

 さて『謎解きはディナーのあとで』ですが
 レギュラーは3人。

 ①国立署の若きエリート・風祭警部
  風祭モータース創業家の御曹司でもある。

 ②若き美人刑事・宝生麗子
  実は、大財閥として名を馳せる宝生グループ総帥の娘。
 
 ③その執事兼運転手・影山

 このうち謎を解くのは誰でしょう?
 正解は、意外にも③の影山。

 彼は執事にもとめられる実直な性格ではなく
 不愉快きわまりない男(ただし、他の2人も同類)。

 しかしながら、犯罪捜査向きの頭脳を持ち、警察が持てあます難事件を
 話を聞いただけでアッサリ解決してしまう。

 こういう事態を「朝飯前」というけれども
 なぜか、謎解きは「ディナーのあとで」。

 そして決めゼリフは
 「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」

 「殺人事件に執事が登場するのは
 英国の探偵小説のひとつのステレオタイプである。」

 と。「グレート・ギャツビー」(中央公論新社)の訳注に
 村上春樹さんが書いています。

 けれども、貴族の国・英国はともかく、われわれ日本の
 庶民にとっては、執事など見たこともない存在でした。

 しかし『メイちゃんの執事』などの影響もあり
 若い人にも違和感がなくなりましたね。  

 彼らが遭遇し、解決していく難事件は
 つぎの6つ。

 1 殺人現場では靴をお脱ぎください
 2 殺しのワインはいかがでしょう
 3 綺麗な薔薇には殺意がございます
 4 花嫁は密室の中でございます
 5 二股にはお気をつけください
 6 死者からの伝言をどうぞ

 中盤以降になると
 あーまたまた風祭と宝生が前座でドタバタやるな~

 そろそろ、影山が出てきて、宝生に嫌みをいいつつ
 解決するぞーと、こちらも待ち受ける感じ。

 それはもう水戸黄門とおなじ
 おさまるところにおさまるという快感。

 日本人はこの一件落着という感じが
 ほんとうに好きなんですねぇ。
 

2011年5月2日月曜日

 ヤエヤマブキ

 

 大学時代、ワンダーフォーゲル部の企画で
 「みんなで歩こう50キロ」というのがありました。

 学内外に呼びかけ、とにかく50キロ歩くという催しで
 恩田陸さんの「夜のピクニック」みたいな感じ。ぼ

 時速4キロメートルで歩いたとして12時間半
 食事もしますから、もっとかかります。

 足にマメのひとつ、ふたつはでき
 最後はくたくたになります。

 途中、先輩のリュックに蝶がとまっていたので
 指摘すると、「幸せの徴(しるし)よ。」。

 なんのことかと思いきや
 映画「慕情(Love Is a Many Splendored Thing) 」からの引用。

 主人公の中国人の女医ハン・スーインが恋をした戦場記者マークに
 そのような中国の言い伝えを教える場面があります。

 その話を下敷きにした、とっさのやりとり
 とても感心しましたし、懐かしい思い出です。

 さてヤマブキのうち八重咲きになる品種がヤエヤマブキ
 八重ヤマブキには実ができません。

 種子植物に進化したはずのヤマブキが、たとえ実をつけずとも
 美しくあるために八重に進化したというのは、とても人間的。

 もっともそれだけでは種の保存がはかれませんから  
 地下で茎を横に伸ばして、種を増やします。

 またその美しさから人間が庭や垣に植えるという形で
 増えています。

 このようなことは王朝貴族にも知られていたようで
 兼明親王の歌が「後拾遺和歌集」(1086)に収められています。
 
   七重八重 花は咲けども 山吹の

            みの一つだに 無きぞ悲しき

 それから400年が経ち
 江戸城を築いた太田道灌の山吹伝説。

 道灌が父を尋ねて越生の地に来たところ
 にわか雨にあい、蓑を借りようと農家に立ちよった。

 そのとき、娘が出てきて一輪の山吹の花をさしだした。
 道灌は、蓑を借りようとしたのに花をだされ腹立たしかった。

 後でこの話を家臣にしたところ、それは兼明親王の歌に掛けて
 つぎのとおり奥ゆかしく答えたものだと教わった。

  貧しさゆえ、悲しいことに
  蓑(=実の)一つさえ持ちません。

 道灌は古歌を知らなかったことを恥じて
 それから歌道に励んだという。

 歌道より善政(救貧施策)に励んでほしい気がしますが
 いかにも日本的な美しい話であることに違いありません。