福岡地裁は先週、春日市に対し、春日市長がおこなった情報一部非開示決定の取消しを命じた。
同訴訟は、春日市民の皆さんが立ち上がり、わが事務所からは富永弁護士と当職が取り組んだ事件である。行政を相手とする行政訴訟は一般事件に比べ勝つことが格段に難しい。が、富永弁護士の活躍もあり勝訴することができた。
対象となった情報は、春日市の指定管理者の令和3年度の収支報告書、令和4年度の収支計画書の支出項目の内訳金額である(6件)。
指定管理者とは、地方自治体が指定した民間団体が公の施設の管理運営を行う制度。簡単に言えば行政事務の外注。新自由主義のもと、規制緩和・行政の民活化の結果である。
外注された業務は、総合スポーツセンター、ふれあい文化センター、児童センター(4か所)、放課後児童クラブ及び市民図書館である。
外注により、市民サービスが向上すればよい。しかし行政が、そして市民の税金が民間企業によって食い物にされてはいけない。
たとえば、放課後児童クラブでは、指定管理者の管理運営がはじまってから、その事業内容が貧弱化したとのではないかとの指摘がなされていた。
市民の皆さんは情報公開条例に基づき、その実態を把握しようとした。しかし市は外部民間企業の意向を尊重して、その収支に関する情報を非開示とした。民間企業の意向とは、収支に関する情報をオープンにすると管理運営ノウハウが外部に知られてしまうというのである。
しかしこれはおかしい。市役所が自身で運営していれば当然開示の対象となっていたものが、外注すると開示できないというのは不当である。
そこで、市民の皆さんは、当該非開示に対し、異議を申立て、本訴に及んだのである。非開示のばあい、オリジナルな文章を黒塗りにして開示される。それゆえ、名付けて「春日市黒塗り行政を正す訴訟」とした。
春日市はかって情報開示に関し、全国的にみても先進的な取組みを行っていた。それをなんとしても復活させなければならない。
訴訟中、民間企業による放課後児童クラブの管理運営実態を分析した。その結果、驚くほど不当な管理運営の実態が明らかとなった。
放課後児童クラブの令和3年年度の収支決算書の執行率によると、事業費のうち、保育教材費は11%、行事費は11%、消耗品費は27%、運営費のうち、会議・研修費は1%などと極端に執行率が低い。
他方で、その他の項目の本部経費549%をはじめとして、事務費の通信費385%、手数料463%、事業費のうち水道光熱費152%、職員駐車場208%となっている。
放課後児童クラブの本体である事業はほとんど実施していない。にもかかわらず、本部経費や通信費、職員駐車場だけが大忙しだったというのである。このような管理運営実態なのであるから、それに対するノウハウが外部に流出するというのもどうなのか。そこでいうノウハウとは、事業をしないで儲ける秘訣でしかないのではないか。
福岡地裁は、われわれの請求のうち5件の情報の開示を命じた(1件だけ非開示を維持した。)。6分の5であるから、ほぼ全面勝訴と評することができよう。これを一審で確定させ、春日市の開かれた行政への一石としたい。
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