『バリ山行』(松永K三蔵著・講談社刊)を読んだ。もちろん「山行」というワードに惹かれて注文した。今年前期の芥川賞受賞作である。
芥川賞受賞作は概して読みにくい。文壇の新人賞なのでやむをえないが、若書きの実験的作風が多く、意味が読み取れないことが多い。
しかし『バリ山行』は読みやすい。意味がとれないということがない。これで長編であれば直木賞といっても疑わないだろう。
さて「バリ」とは何か?誰しもが戸惑うだろう。まず思い浮かべるのはバリ島のバリだろう。バリ島に山があるのだろうか?いや、ない。いや、あるかもしれないが、本作のバリはバリ島のバリではない。
つぎに思うのは形容詞、副詞のバリ。バリ美しい、バリバリ働くというやつ。でも『バリ山行』のバリは、そのような形容詞、副詞のバリでもない。
正解はバリエーションルートの略である。バリエーションルートといっても、登山する人でも初心者には分からないだろう。登山道のない、道なき道がバリエーションルート。
一番有名なのは北鎌尾根。北アルプスは槍ヶ岳へ向かう3つの鎌尾根のうちの一つである。北鎌尾根には整備された登山道がない。道標もなければペンキマークもない。
地図とコンパスと地形だけを頼りに槍ヶ岳山頂をめざす。登山者あこがれのルートである。1949年には登山家の松濤明が遭難死したことでも知られている。
バリエーションルートの醍醐味を知らないバカ親切な登山者がペンキマークをつけたことがあった。山小屋のスタッフがこれをわざわざ消してまわったのである。バリエーションルートのウリは標識やペンキマークが存在しないことなのである。
『バリ山行』と聞いて「ああバリエーションルート山行ね」と思う登山者も少ないと思われる。「バリ山行」なる略語は著者のオリジナルではなかろうか。しかし作中では登場人物の人物たちが通例のように使っている。神戸界隈では意外と知られているのかもしれない。
『バリ山行』の舞台は六甲山である。われわれも昨年4月全山縦走に挑戦した(写真参照)。
六甲山は『孤高の人』加藤文太郎が訓練をした山。居留地の外国人が古くから登った伝統がある。日本登山の聖地。ただし、おおくの神戸市民が日常的に登っているため、現地は聖域から遠い印象である。
六甲山は標高931mの低山。神戸市街のすぐ背後に聳え、関西人に人気の山域である。最近でも、吉田類のにっぽん百低山でやっていた。
https://www.nhk.jp/p/ts/NLKZP1Q6Y7/
またジオ・ジャパン絶景100の旅でもやっていた。海にちかい150万都市のすぐ裏になぜ、このような山が存在するのか?の謎解きにワクワク。バリ面白かった。
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