ありま山ゐなの笹原風吹けば
いでそよ人を忘れやはする 大弐三位
有馬山から猪名の笹原へと風が吹きおろすので、笹の葉がそよそよとそよぐ。そうですよ、そのように、私はあなたのことを忘れなどするでしょうか、忘れはしません。
百人一首58番の歌。大弐三位は紫式部の娘である。和泉式部-小式部内侍の母娘につづいて、母娘での登場。いまなら藤圭子-宇多田ヒカルみたいなものか。才能を受け継ぎ、母娘で栄誉を受ける。
大弐三位も、やはり彰子のサロンに入っている。これもまた和泉式部母娘と同じ。というか逆か。
大弐・三位という名前は、前半は夫が大宰大弐だったから、後半は自身が後冷泉天皇の乳母となり従三位に叙されたため。
東京オリンピック2位、パリオリンピック3位となれば、第2位・3位と呼ばれるだろうか。
知りあいの弁護士に夫が(元)弁護士会会長、自身がロータリークラブ地区幹事、ガバナー補佐(予定)のかたがいらっしゃる。世が世なら、弁護士会会長・地区幹事・ガバナー補佐・弁護士だ。
めぐりあひて見しやそれともわかぬまに
雲がくれにし夜半の月かな 紫式部
やっとめぐり会って、見たのが月だったのかどうかもわからないうちに、雲の中に隠れてしまった夜半の月よ。それと同じように、久しぶりに出会ったのに、幼友達のあなただったのか、はっきりと見分けられないうちに、あなたは姿を隠してしまいました。
猪名(郡)はいまの吹田、伊丹、尼崎あたりのことらしい。つまり、淀川河口の北岸あたりだ。平安時代は笹原だったのだろう。
しかし、有馬の山から淀川河口あたりまで風が吹き下ろすということがあるだろうか?
調べると、昔から有馬山と猪名はセットで詠まれることが多かったらしい。有馬山は特定の山ではなく、その周辺の山々の総称だという。それなら、いまの六甲山東部でよくないだろうか。よく分からない。
よく分からないといえば、「笹の葉がそよそよとそよぐように、私はあなたのことを忘れはしません」というロジックもよく分からない。時間が経って忘れることができたと思っていても、なにかのひょうしに思い出してしまい、心がざわざわするということだろうか。なんか、ざわざわする。
※現代語訳等は『ビギナーズクラッシック日本の古典 百人一首(全)』谷知子編によった。
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