風をいたみ岩うつ波のおのれのみ
くだけて物を思ふころかな 源重之
風が激しいので、岩に打ち寄せる波が自分だけ砕け散るように、相手は平然としているのに、私だけが砕け散るような、恋の物思いをしていることよ。
百人一首48番の歌。昨日紹介した実方とともに陸奥国に下向し、同地で没したという。
父・兼信が陸奥国安達郡に土着していることから、実家に帰ったのかもしれない。
安達太良山の青い空がほんとうの空と指をさす智恵子像
中央が安達太良山
陸奥国安達郡は、高村光太郎の『智恵子抄』で有名な安達太良山の麓である。
鬼女が住んでいたという黒塚
安達太良山の麓には、安達ヶ原がひろがっている。安達ヶ原には黒塚がある。つまり、謡曲『安達原』ないし『黒塚』の舞台である。ストーリーはこう。
阿闍梨祐慶ら修験者らは、諸国をめぐる修行をしていた。旅の途中、人里離れた安達ヶ原で日が暮れてしまう。一軒だけあったあばら家の女に一夜の宿を提供してもらうことになった。
夜更け、女は薪をとりにいくと言って出かけた。出かける際、自分の寝室を覗かないよう女は一行に釘をさした。けれども、従者が覗いてしまい、そこにはおびただしい数の死骸が。あわてて逃げ出す一行を鬼となった女が追いかける・・・。
禁じられると破りたくなる。童話『みるなのくら』のよう。
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