その上告審において、最高裁は「不合理か否かの判断には、基本給の様々な性質や支給の目的を検討すべきだ」として、名古屋高裁に差し戻した。
労働契約法旧20条は、正社員か否かによる「不合理な差別」を禁止している。仕事内容が同じなのにという前提をおけば、4割以上の給与減は不合理な差別になりそうである。
しかしそこで言われる再雇用者の基本給の性質・支給目的を検討して判断せよという。その中身は、役職就任が想定されていない事実等について考慮をせよというのだから、つまるところ6割未満でもよいと言っているようにも読める。
法律やその解釈は、法的安定性と具体的妥当性という2つの相反する要請の中間でゆらめていている。
名古屋高裁の判断は、とにかく給与を6割未満にしてはダメというルールだから分かりやすい。誰でも判断できる。これを法的安定性があるという。近代法は法的安定性を重視していたという。資本主義の発展期にはルールが明確であることのほうが大切だから。
最高裁の判断は、ケース・バイ・ケース。基本給の性質・支給目的次第によっては6割未満でも許されるとの判断だ。法的安定性よりは事案ごとの具体的妥当性を尊重しようとする姿勢である。
具体的妥当性といえば聞こえはいいが、これから先、一件一件争ってみなければ勝敗は分からない。事案の性質上、原告はすべて60歳以上である。結局のところ、再雇用者側に重い負担をかけることになり、その権利を事実上制約することになりそうだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿