2021年2月25日木曜日

【ノリノリ憲法判例の天邪鬼談義①】「牛刀をもって鶏を割く」の類

 

昨日、最高裁で、孔子廟のために那覇市が土地を無償提供していることが憲法の政教分離規定に違反する、という大法廷判決が出ましたね!


えっ、知らない?興味ない?


私も、最高裁の大法廷で弁論があったという先月の報道で初めて裁判の存在を知ったミーハーですが、違憲判決が出たことに、一人で勝手にテンションが上がっていました。


見解の当否ではなくて、単純に最高裁での違憲判決が珍しいからです。


司法試験の勉強の息抜きに憲法を勉強していたという、例えるならば、わんこそばの息抜きにうどんを食べるみたいなストイックなことをしていた私としては、これはブログに書かなきゃ、と勝手に意気込んでいたのです。


ただ、間違いなく憲法判例史に残る判決。専門的な解説は、これから偉い先生方が続々と書かれるに違いありません。


悲しいかな、しがないマチ弁の私が「この判例はですね・・・」などと真っ正面から解説しようものなら、とんだ勇み足になりかねません。


と、いうことで、長い前フリをへて、この判例の「そこかよ!」とツッこまれそうな私の着眼点を紹介したいと思います。


「反対意見の切り返しの面白さ」についてです。


この判決、当時の那覇市長が都市公園内に孔子廟の設置を許可した上で、敷地の使用料全額を免除したことが、憲法の定める政教分離規定に違反すると判断しました。


孔子廟というと、儒教の祖である孔子を祀っている霊廟のことだそうです。

孔子というと、「子曰く・・・」の論語の方ですね。


この孔子廟のために敷地をいわば無償提供していることについて、那覇市と儒教との関わり合いが相当とされる限度を超えて許されない、と判断したのが今回の判決の多数意見です。


そんなに宗教性ある?公共施設じゃないの?など、これ自体、様々な議論がありうるところです。


ところで、最高裁判決には、裁判官個人が意見を書くことができます。

今回の判決にも、林景一裁判官の反対意見が付されていました。


最高裁の大法廷は裁判官が15名ですから、14対1の判断だったことが分かります。


林景一裁判官の反対意見を一部抜粋すると、次のような部分があります。


「であるからといって,本件施設について,今日的な宗教性を否定する相応の主張,理由があって,前記のとおり,もはや宗教性がないか,既に希薄化していると考えられる中で,外観のみで,宗教性を肯定し,これを前提に政教分離規定違反とすることは,いわば「牛刀をもって鶏を割く」の類というべきものである。」


要するに、政教分離規定違反をいう多数意見に対し、問題となった孔子廟の宗教性が希薄化していると述べて、「そこまでせんでよくない?」という趣旨のことを言われています。


面白いのは、「牛刀をもって鶏を割く」という孔子の『論語』の言葉をひいて、切り返しているところです。


孔子廟の問題には、孔子の言葉で切り返す。


最高裁の裁判官が書かれると、「はあ~さすが」と粋なやりとりに感心してしまいました。


私なんぞが、訴状で、「いわば『牛刀をもって鶏を割く』の類である!」(どや)などと書こうものなら、裁判官から「はあ?」と思われること必至です。


判決といえど、人に読んでいただく文章。やっぱり理路整然としている中でも、「面白い!」「読みたい!」と思ってもらえる粋な内容も書いてもらいたいですね!(ブーメラン)


富永

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