2021年1月21日木曜日

高齢化社会の裁判


 

80代のかたの刑事裁判がありました。
犯罪事実は道路交通法違反(酒気帯び運転)です。

打合せを3度行ったのですが、うち2度補聴器の調子が悪く、本番での調子が心配されました。事前に裁判所から連絡があり、補聴器を用意しましょうかとのこと。刑事裁判なので、裁判所はどちらかというと「お上」として振る舞うことがおおく、被告人に対するこのような配慮ははじめてでした。
当日、案の定、ご本人持参の補聴器は調子が悪い。裁判所が用意した補聴器のお世話になりました。しかしながら・・・

刑事事件は、民事事件と異なり、文字どおり「口頭」弁論です。
被告人本人であることを確認する人定質問にはじまり、起訴状の朗読、罪状認否、冒頭陳述、検察側証拠の朗読など、すべて「口頭」でおこなわなければなりません。
被告人のかたは、聞こえにくいのか、説明がむずかしいのか、ときどき芳しい回答をされません。
その都度中断して、書面を示しながら、起訴状、冒頭陳述、検察側証拠の内容をひとつひとつ確認しました。

いちばんハラハラしたのは自宅から事故現場までの走行経路の確認作業。
自宅をでて、これこれの道路を経て、スーパー○○の前で事故を起こしましたよね?
と確認するのですが、なかなか肯定されません。しばらくしてようやく納得されました。5分ほどだったのでしょうが、一時間にも感じられました。

検察側立証のあとは、弁護側立証。
しめくくりは被告人質問。
いつもは検察官の厳しい反対尋問がまっています。
しかし、この日は特になし。
検察官の人間的な対応にほっとしました。

即日結審、即日判決でした。
このこともあり得ない対応ではありませんが、高齢の被告人がなんども裁判所まで出かけてこなくてよいようにする、判決までの期間の心労を軽減するなどの配慮があったと思います。
なかでも初めての経験は、裁判官がまず紙に主文を記載して(よみがなつき)被告人に交付し、そのうえで判決の言渡しをしたことです。
被告人を懲役10月に処する、この裁判確定の日から3年間この刑の執行を猶予する・・・

憲法31条は適正手続主義を掲げています。これは被告人の尊厳を保障し、刑事手続の主体として遇するということです。
手続の理解が難しい被告人には、それが理解できるよう最大限の配慮が必要であると考えます。高齢化社会がますます進むにつれて、このような配慮が必要になってくるでしょう。





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