2011年6月16日木曜日

 別れた男の義務~話題の事件


 
 さいきん、ちくし法律事務所で話題になった事件を
 紹介します。

 最新の判例集(判例時報2108号57頁)に掲載されていたもので
 東京高裁の事案です。

 太郎さんは、結婚相談所を介して花子さんと知り合いました。
 2人は交際、合意の上で性行為を行い、花子さんが妊娠しました。

 その後、破局。
 花子さんは太郎さんの了解をえて中絶しました。

 花子さんは、太郎さんが妊娠と中絶に関して不法行為責任
 (民法709条)を負うとして提訴。

 治療費、慰謝料など合計905万円の損害賠償を求めました。
 太郎さんはこれを争いました。

 男女間でありがちな事案ですが
 みなさんはいかがお考えでしょう?

 東京地裁、東京高裁ともに
 太郎さんの責任を認め、114万円余の賠償を命じています。

 中絶後に、太郎さんが花子さんの身体的、精神的苦痛や経済的負担の
 不利益を軽減し、解消するための行為をしないことが不法という理由。

 さすがに合意の上で性交渉をし妊娠中絶をしたこと自体は違法に
 なりません。

 でもその後の態度、不作為責任を問題にされています。
 先行行為に基づく保護責任者遺棄罪みたいな理屈ですね。

 結論の妥当性、法的な理由、慰謝料額の当否について
 いろいろと議論になりました。

 女性弁護士が東京高裁の判断を必ずしも支持するわけでは
 なかったところが、この事案の微妙なところです。

 おなじようなご相談がきたときにどうなるのか?
 やはり悩ましい事案であるといわなければならないようです。

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