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2013年5月23日木曜日

『極北』






マーセル・セロ-の『極北』
(中央公論新社)。
ひさしぶりに
師匠のおすすめ。

みなさんにも
おすすめします。

なかみは
いえません。

読んでみれば
わかります。

訳は
村上春樹さん。

2013年5月15日水曜日

『グロウブ号の冒険』





『黄金の騎士団』につづき
井上ひさし氏の遺作。

『グロウブ号の冒険』
(岩波書店)。

井上ひさし氏といえば,子どものころの
『ひょっこりひょうたん島』からお世話に。

これもまた『ひょっこり』とおなじく
ユートピア小説の系譜に属しています。

うっかり読み飛ばすと
楽しいだけに終わってしまいます。


巻末の小森陽一氏の解説を読むと
自分の読みがいかに表層的であったかを痛感させられます。

トマスモアの『ユートピア』は
いうにおよばず

スティーブンソンの『宝島』から
ジョニー・デップの『パイレーツ・オブ・カリビアン』まで

古今東西の作品を踏まえ
本作の豊富な世界が重層的に読み解かれています。


やはり未完。
結末は自分で想像するしかありません。

小森解説はこの点についても
かなり親切なヒントを与えてくれています。

う~ん。『黄金の騎士団』も
もういっぺん読む必要がありそうです。

2013年4月17日水曜日

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年






村上春樹さんの新作発売!
ニュースが流れていました。

ボクはたまたまポール・メリコの
『天空のリング』(ハヤカワ文庫)を読んでいました。

5人で1人を構成するポッドが
崩壊した世界をたてなおす。

彼らは記憶や感情を共有し
5人で一体なのだが…。

これもなにかの
シンクロニシティでしょうか?


村上作品(文藝春秋)のタイトルは
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。

発売前に作品の内容を明かさないことで
逆に読者の好奇心に火をつけるプロモーション。

読んでみれば,なるほど
タイトルに答えは書いてあります。


主人公は
多崎つくる。

「つくる」という名のとおり
人生と物語をつくっていきます。

そこは村上作品ですから
新たにというより,再構築という感じですね。

彼の属性は
「色彩を持たない」とされています。

そこから「色彩」が
メタファーとして重要なことがうかがえます。

巡礼は,宗教の聖地を巡り
祈りをささげる旅。

これにより年来の願いが
実現するとされていますよね。

つまりは,色彩を持たない主人公が
祈りをささげる旅をすることで人生を再構築する物語?


「巡礼の年」というのは
フランツ・リストのピアノ独奏曲集のタイトルから。

音楽,ピアノ,白・黒の鍵盤が
重要なメタファーになっています。

なかでも,第1集スイスのなかの第8曲
「ル・マル・デュ・ペイ(郷愁)」が重要。


構成は
これ以上ないほど明瞭。

多くの比喩が互いに響き合いながら
全編を彩っています。


最近の村上作品には
現実と象徴の境界があいまいとの批判も。

意図的な手法ですが
そのために,苦手意識をもった人もいるでしょう。

本作ではそこは現実と夢の世界として
注意深く書きわけられていると思います。

安心して最後まで堪能できます。
「記憶と象徴としての世界」をどうぞ。

2013年2月27日水曜日

沈黙の町で





『沈黙の町で』(朝日新聞出版)
奥田英朗さんの新作。

『噂の女』が出てから
さほど経っていない。

よくこんなに書けるものだ。
筆力がすごい。

いつもながら,個々人ではなく
地域社会そのものが書かれている。


朝日新聞に連載していたものを
単行本にしたもの。

新聞小説だけあって
冒頭からぐいぐいひきこまれる。


高校生男子の死体が
校内で発見された。

容疑者として
4人の遊び仲間が浮上する。

警察,検察の捜査がすすむなか
真相は?

物語はなかほどから
意外な展開をみせはじめる。


高校生の殺人(傷害致死を含む。)事件の付添人を
3度ほどつとめたことがある。

ひとたび死体が発見されると
住民全体が不安と怒りにとらわれてしまう。

地域社会には
非常な重圧がかかる。

この重圧が地域社会をいつもと違う雰囲気でつつみ
人々の判断を狂わせがちだ。

むかし西部劇で共同体の敵にリンチをおこない
裁判を経ないで死刑にしたりする場面があった。

たとえは適切でないかもしれないが
あんな感じだ。

だからいつまでも犯人がつかまらないと
怒りの矛先が捜査機関に向くことになる。

捜査機関としてはとにかく犯人を検挙して
有罪にもちこむ必要がでてくる。

これがまたえん罪を
うむ温床になってしまう。

もうそれは個々の人の冷静な判断を
蹂躙するほど強烈なものだ。


奥田さんの著作は
いつもほんとうにリアリティを感じる。

本作も人々の動きが
いずれも説得的だ。

しかし社会を突き動かす異常なエネルギーについては
かなり押さえた筆致になっている。

ノンフィクションなえん罪小説ではなく
文芸的な作品にするために必要な修正だったのだろう。

2013年2月20日水曜日

夢のような幸福





三浦しをんさんの
『夢のような幸福』(新潮社)。

読了してしまいました。
寂しい。

残るエッセイも
あとわずか。

最新刊からさかのぼって読んでいっているので
順に読んだ人にとっては逆走。

わかりにくくて
すみません。


あいかわらずすごい生活で
読んでいて,手に汗にぎったり,電車のなかで吹きだしたり。

映画や漫画への没頭,熱愛ぶりも並大抵ではないので
すべての作品がとても魅力的に思えます。


『ロード・オブ・ザ・リング』はもちろん観ていましたが
こんかい,三浦さんにあおられてDVDを観てしまいました。

むろんヴィゴ・モーテンセンの
アラゴルンを中心に。

たしかに“ヴィゴさま”からながめる
『ロード・オブ・ザ・リング』はまたちがう世界。

「男ばかりの旅の仲間」
がいやに気になりました。


そんなある日(ことしのバレンタインデーのころ)
うちの秘書さんが意味深な顔をしてちかよってきました。

すわチョコレートかとおもいきや
差しだされたのは,なんとBLマンガ。

ガク。
ムク。

(ガクはチョコレートではなかったので
ムクはBL世界への手がかりをつかんだので)

ボクがブログであまりにBLの世界に興味を示したので
差しいれてくれたわけです。

ありがとう~。


さっそく
読んでみました。

なんやこれ?
つまら~ん。

ボクはまったく
その世界の趣味がないことが検証されました。

安心したような
残念なような。

おもえば
幸福な夢をみていただけなのでした。

三浦さんがあまりにその世界を
魅力的に紹介するものだから。

おしまい。

2012年11月8日木曜日

『本屋さんで待ちあわせ』




(12番山 珠取獅子)

読書ばなれ
がいわれて久しい。

まわりでもたしかに
若い人たちが本を読んでいない。

まえにも書いたが,本を読んでいない人は
長じてから物足りない気がする。

そうしたなか,明日9日まで
読書週間。というわけで

三浦しをんさんの『本屋さんで待ちあわせ』
(大和書房)を読んだ。

レビュー集なのだが
信じられないくらいおもしろい。

「はじめに」を読んだだけで
お代のもとがとれた気がする。

三浦さんは,はんぱない読書家だ。
依存症,中毒といってもいいぐらいだ。

それはそうだ
ほとんどの本を愛している。

どのレビューでも
その本への愛を惜しげもなく絶叫している。

これぐらい本を愛することができれば
本望であろう。

心配になるのは(彼女じしんも認めているが)
本にのめりこみすぎて,実際の恋愛がおろそかになることだ。

たしかに(彼女じしんも欲しているが),どこまで深いりするかは
別として,週1で会って本の話をするのは楽しそうだ。

というわけで
『本屋さんで待ちあわせ』ということになる。