2013年4月17日水曜日
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
村上春樹さんの新作発売!
ニュースが流れていました。
ボクはたまたまポール・メリコの
『天空のリング』(ハヤカワ文庫)を読んでいました。
5人で1人を構成するポッドが
崩壊した世界をたてなおす。
彼らは記憶や感情を共有し
5人で一体なのだが…。
これもなにかの
シンクロニシティでしょうか?
村上作品(文藝春秋)のタイトルは
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。
発売前に作品の内容を明かさないことで
逆に読者の好奇心に火をつけるプロモーション。
読んでみれば,なるほど
タイトルに答えは書いてあります。
主人公は
多崎つくる。
「つくる」という名のとおり
人生と物語をつくっていきます。
そこは村上作品ですから
新たにというより,再構築という感じですね。
彼の属性は
「色彩を持たない」とされています。
そこから「色彩」が
メタファーとして重要なことがうかがえます。
巡礼は,宗教の聖地を巡り
祈りをささげる旅。
これにより年来の願いが
実現するとされていますよね。
つまりは,色彩を持たない主人公が
祈りをささげる旅をすることで人生を再構築する物語?
「巡礼の年」というのは
フランツ・リストのピアノ独奏曲集のタイトルから。
音楽,ピアノ,白・黒の鍵盤が
重要なメタファーになっています。
なかでも,第1集スイスのなかの第8曲
「ル・マル・デュ・ペイ(郷愁)」が重要。
構成は
これ以上ないほど明瞭。
多くの比喩が互いに響き合いながら
全編を彩っています。
最近の村上作品には
現実と象徴の境界があいまいとの批判も。
意図的な手法ですが
そのために,苦手意識をもった人もいるでしょう。
本作ではそこは現実と夢の世界として
注意深く書きわけられていると思います。
安心して最後まで堪能できます。
「記憶と象徴としての世界」をどうぞ。
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