2024年1月15日月曜日

姨捨山(1)姥捨駅、長楽寺

 

(日本三大車窓の一)

(スイッチバック、奥に姥捨駅)

(長楽寺とおもかげ塚)

(姨石と桂の木)

 天気が荒れる予報で下山し、信州上田に宿泊した。翌31日は姥捨山を訪問することにした。

そのわけはやはり芭蕉ゆかりだから。芭蕉の紀行文に『更科紀行』がある。『笈の小文』の旅の帰り、まっすぐに江戸に向かわないで、信州更科を訪ねた際のものである。更科といえば、ソバぐらいしか思い浮かべられないが、実は月見の名所である。

 さらしなの里、おばすて山の月見ん事、しきりにすゝむる秋風の心に吹きさはぎて、・・・。
   姨捨山
 俤や姨ひとりなく月の友
            (『芭蕉紀行文集』中村俊定校注・岩波文庫)

上田から、しなの鉄道線で篠ノ井駅まで、そこから篠ノ井線で姨捨駅まで。姨捨駅は標高551m。南に冠着山(かむりきやま、駅からは見えない)があり、山の中腹にある。かつてSLではこの勾配を一気に上ることができず、スイッチバックになっている(にわか鉄ちゃん)。

電車を降りると、目前に長野盆地・善光寺平の絶景がひろがある。日経の2007年アンケート「足を延ばして訪れて見たい駅」第2位。日本三大車窓の一つ。ちなみに残りの2つは、根室本線・狩勝峠越え(廃線)と肥薩線・矢岳越え。

善光寺平の右手の山塊奥に四阿山(日本百名山)、左手の山塊奥に飯綱山(日本二百名山)が見えている。盆地を横切って千曲川が流れている(右手前から左奥へ)。盆地の左奥で犀川と合流する。千曲川と犀川の間が、あの川中島である(武田信玄と上杉謙信の決戦場として有名)。犀川の向こうには善光寺が見えているはず。

駅から盆地のほうへ10分ほどくだると長楽寺(国の名勝)がある。門脇にあるおもかげ塚(芭蕉翁面影塚)が有名である。先に紹介した「俤や」の句が刻まれている。上方に月見堂があるが屋根を改修中(写真で青く覆われている部分)。

小林一茶が4度訪れ、伊能忠敬も訪ねたことがあるという。その他にも多くの文人墨客が訪れたのであろう、境内にはたくさんの歌碑や句碑が並んでいる。

寺の中央に姨石がある。高さ15m、幅・奥行き25m。石の左手前に、市指定の天然記念物・桂の木がある。樹齢は500~1000年と大きな幅がある。謡曲『姨捨』との関係だろうか。

姨石には登ることができる。頂上部からはやはり善光寺平の絶景を望むことができる。名古屋あたりにいた芭蕉がなぜわざわざ信州の山中にある更科の里へ行ったのか。長い間分からなかった。しかしここへ来て大いに納得。素晴らしい月見ができることであろう。

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