2024年1月22日月曜日

安宅

 

 大濠公演能楽堂で、お能を観劇した。観世流・特別講演。

演目は、神歌(独吟)、高砂(連吟)、羽衣(舞囃子)と正月らしい・おめでたいもの、その後山姥(舞囃子)、杜若(一調)を経て、締めは安宅(能)。狂言は樋の酒。

山姥は、遊女一行が善光寺詣を志して、越中・越後の国境にある境川に至り、そこから上路山を越えようとしたところ山姥にであう曲。

杜若(かきつばた)は、『伊勢物語』に材を取り、諸国一見の僧が三河国の八橋で、杜若の精にであう曲。前シテの女は、在原業平の故事を語る。「唐衣(からころも)着つつ馴れにし妻しあればはるばるきぬる旅をしぞ思う」。業平はかって旅の心を詠んだ。この歌には、か・き・つ・は・たの言葉が詠み込まれている。

安宅(あたか)は、歌舞伎・勧進帳のもととなったもの。加賀の国安宅の関を舞台に、頼朝の追求を逃れる義経、弁慶ら主従が富樫某の詮議をかわし、虎口を脱する曲。

チケット発売は昨年10月14日であるから正月の能登地震は思いもしていなかったであろう。しかし、なにかその発生を予感したかのようなラインナップになっている。

安宅は加賀・小松空港からすぐ。立山、劔や薬師岳に登る際には、小松空港から越中富山をめざす。途中、弁慶と富樫の像が立っている。そこを通るたびにこの故事を思う。

弁慶は、白紙の巻物を勧進帳と偽って読み上げたり、主人の義経を打擲するなどの知恵と胆力でもって虎口を脱する。しかし歴史は義経・弁慶主従に味方せず、やがて主従は奥州の地で頼朝勢に滅ぼされてしまう。

この曲はわれわれに何を語っているのだろうか。とおい先のことはともかく、いま・ここにある課題の克服に集中しよう。そう教えてくれているように受けとめた。

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