槍沢ヒュッテについたのは昼すぎ。ちょっと前から雨になっていた。あとから続々と登山者が到着する。みな凍えそうな表情だ。早出早着計画でよかった。
翌朝は快晴。槍沢をつめていった。左手は梓川が水量おおくゴウゴウ鳴っている。ヒュッテをでるとまもなくから、西岳や赤沢山の稜線からくだってくる雪渓をつぎつぎとトラバースしていく。槍沢からはいっとき槍の穂先が見えるが、残念ながら木々がじゃまをしている。
キャンプ場のあるババ平から先は槍沢上部の雪渓地帯。春を迎え、あちこちヒビが入り、崩れそうで怖い。大曲を曲がると、槍沢の水流は雪渓の下に隠れてしまう。そこからは槍に向かってひたすら雪渓を登る。白馬の大雪渓を2、3つ登るかんじだ。
左から大喰岳の稜線が、右から東鎌尾根の稜線が迫り、谷がどんどん細くなっていく。グリーンバンドという氷河地形のあるところをすぎると、くっきりと槍の穂先が見える。
そこらあたりからスラブといって雪崩のあとがあちこちにある。残雪期だからといって、雪崩が起きない保証はない。昨夜は稜線部で30センチの積雪があったと誰かが言っていた。
穂先が見えてからも長い。アイゼンとピッケルを確実に操作しなければならない。雪はしまっていて、よいコンディションだ。
ただし単調ではない。踏み抜きといって、雪が薄くなったところで、膝ぐらいまで埋まってしまう。ときには大腿のつけねまで埋まってしまって、行動不能になった人もいた。
岩や砂礫が露出しているところもある。後ろを振り返ると怖いので振り返らない。途中で休憩する回数が増える。中途半端なところで休憩すると、転げ落ちそうだ。
なんとか稜線に達することができた。振り返ると、手前に蝶が岳から常念岳の稜線。後ろに浅間山、八ヶ岳、富士山(写真を拡大すると、中央にちょこんと見える。)、南アルプス、中央アルプス。そして前穂高岳などの山々が美しい。
北に目を転ずると、西鎌尾根の先に、黒部五郎、双六、薬師岳、水晶岳、立山、白馬など黒部源流の山々が残雪に輝いていた。
当初の計画では、槍ヶ岳に登り、肩の小屋に一泊して、翌日、下山する計画だった。しかし天気予報によると、翌々日は朝からマイナス4度、風速15メートル、霧という天気予報だった。風速1メートルにつき体感温度は1度下がる。あすは体感温度マイナス19度となるということだ。そこで槍ヶ岳山荘には泊まらず、槍沢ヒュッテに戻ることにした。
登り5時間30分、くだり3時間30分、合計9時間のコースタイムだ。体力的に歩けるかどうか心配したけれども、明日くだるよりはマシだろう。バテバテだったが、なんとかくだりきることができた。大満足の山行だった。
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