公示送達、という制度があります。
どこに住んでいるのかさっぱり分からない相手に対して裁判をするために、裁判所入口の掲示板に貼りだしをして、送達したことにしてしまう、というものです。
先日、とある事件のご依頼で、公示送達を利用することがありました。普通に書いても面白くないので、巌流島の決闘風にアレンジしてご報告したいと思います。
とあるご相談に来られた佐々木小次郎さん(仮名)。
宮本武蔵さん(仮名)に物申したいことがあるそうで、決闘(裁判)もやむなしの構え。
ところが、伝書鳩は届く(郵便物は転送されている)一方、宮本さんの居場所が分からないのだとか。
まあ、まずは話し合ってみましょう、と当職。
佐々木さんが言いたいことがあるそうですよ、と宮本さんに伝書鳩を飛ばし(お手紙を出し)ました。
が、宮本さんからの回答はなし。
やむをえない、決闘(裁判)だ!ということになりました。
しかし、決闘(裁判)の申入れ(訴状の送達)ができません。どこにいるか分からないからです。
当職、まずは伝書鳩を追いかける(転送先住所を弁護士会照会する)ことにしました。
ところが、鳩飼い(郵便局)から、鳩をつけるな(守秘義務があるから教えない)と言われてしまいました。
むむ、ちゃんと、鳩をつけてもよい場合がある、という奉行所の判断(判例・裁判例)を説明してからやったのになあ。
仕方がないので、奉行所(裁判所)に、
「貼りだしてくれい」とお願い(公示送達の申立て)をしました。
この間、佐々木小次郎さん、かなり待たされます。
巌流島で待つ、佐々木さんと当職。
すると、奉行所(裁判所)から、「貼りだそうとしたが、うちの鳩を飛ばしたら届いた」と連絡がありました。
ついに現れた宮本さん。しかも長い木刀(代理人弁護士)を持ってやってきました。
ここで、実際の佐々木小次郎なら、刀の鞘(さや)を投げ捨てるところですが、そこは脇に控える当職。
「まあまあ、宮本さんも出てきたことですし、話し合いましょう」ということで、
いったん刀は収めて、話合い(調停)をすることにしました。
かくして、無事、円満に話合いを終え、生きて巌流島を出られたのでしたとさ。
めでたし、めでたし。
富永
P.S.
引用判例は以下のとおり。
最小判平成28年10月18日・民集70巻7号1725頁(岡部補足意見)
裁判要旨 裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
判決全文 086198_hanrei.pdf (courts.go.jp)
東京高判平成22年9月29日・判時2105号11頁)
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