ある傷害被疑事件を受任している。関係者は主に加害者と被害者の2人である。被疑者は自白し、事実関係を争ってはいない。
刑事手続は起訴を境に、捜査段階と公判段階に分かれる。捜査段階では被疑者(容疑者)、公判段階では被告人と呼ばれる。
逮捕・勾留されるかどうかにより、在宅事件と身柄事件に分かれる。事案の重さ、罪証隠滅の可能性、逃亡の可能性により、逮捕・勾留されることになる。
捜査段階では警察の留置場、公判段階では拘置所に勾留されるのが一般的だ。本件では福岡市内の警察署に勾留されている。
逮捕・勾留は重大な人権制約であるので期間制限がある。逮捕は最大72時間、勾留は1回10日間、1度まで延長できる。つまり、最大23日間の身柄拘束を受ける。
身柄拘束は重大な人権制約であるから、勾留を許すかどうか裁判官が審査することになっている。いわゆる令状主義である。これは憲法の定める重要な人権である。しかし長らく裁判所の審査は形式的で、捜査機関が逮捕・勾留を請求すれば、裁判官はこれを丸のみしてきた。
しかし近時、勾留要件を厳格に解する動きもみられる。本件では勾留延長請求がなされ、裁判官はこれを丸のみして、10日間の延長を認めた。
23日間というのはマックスの期間であり、必ずそれだけの期間を勾留しなければならないというものではない。関係者2人だけの傷害事件で2勾留も必要かは大いに疑問である。被疑者の職場では大いに支障が生じている。
勾留延長決定も裁判の一つであるから、異議申立をすることができる。準抗告という。午前中は破産債権者集会、午後は同友会の総会であったが、昼間、事務所に戻り、いそいで起案して提出した。
その結果、3日減らし、7日の延長に変更された。ささやかだけれども、被疑者の人権を回復することができた。
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