2011年12月20日火曜日

『クライマーズ・ハイ』(5) by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 ジョギングをすると最初は苦しいばかりですが
 慣れると途中からふっと幸福感が訪れます。

 ランナーズ・ハイの状態ですね。
 むかし先祖が狩りをしながら幸せだったころの名残りでしょうか?

 これに対しクライマーズ・ハイは、登山者の興奮状態が極限まで達し
 恐怖感が麻痺してしまう状態のこと。

 大きなヤマ(困難)にぶちあたると、火事場のバカヂカラを出す必要からか
 われわれは興奮するように設計されているようです。

 しかし他方で、山は危険がいっぱいですから
 判断を誤りやすい危険な状態でもあります。

 クライマーズ・ハイは、登山家たちがそういう状態にあるのではないかと
 自分を戒めるための言葉のようです。

 司法修習の2年目の夏(弁護修習中、お盆直前)、1985年8月12日
 日本航空123便が墜落事故を起こしました。

 東京・羽田から大阪へ向かうジャンボジェットで
 群馬県の御巣鷹山の尾根に墜落。 

 乗員乗客524人のうち死亡者数は520人
 死者数は当時国内で最多、単独機では世界最多。

 亡くなった方が残した家族へのメッセージに
 涙しました。

 墜落までの恐怖の時間であってさえも
 家族への愛を表現する勇気をおしえられました。

 この事故がわれわれにさらに鮮烈な印象を残したのは
 奇跡的に4人の生存者がいたことでしょう。

 少女が救出された際の映像が
 いまも想起されます。

 事故以降、なんども福岡と東京を飛行機で往復しましたが、その都度
 たとえ墜落しようと人間らしく生き、あるいは死にたいと願いました。

 この事故に遭遇した群馬県の地方紙の記者・悠木とまわりの群像を描いたのが
 横山秀夫さんの『クライマーズ・ハイ』(文藝春秋 2003年)。
 単行本が出版されたのが薬害肝炎事件を提訴した年の夏です。
 もちろん読みました。

 薬害肝炎救済法が成立した2008年
 夏に谷川岳に登り、その際にも文庫で再読しました。 

 佐藤浩一さんでテレビ・ドラマ(NHK 2005)
 堤真一さんで映画(2007)にもなりました。

 このキャスティングだけで
 観てみたくなったでしょ?

                   ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

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