2024年10月2日水曜日

「虎に翼」後半の評価

 

 「虎に翼」が終了した。毀誉褒貶あるが、女性法律家の苦難の人生を追体験することで、法律家以外の人たちも法律家の人生について強い興味をもったことはよかったと思う。また、あーでもない、こーでもないと話題にし、議論できたことの意義も大きかったと思う。

 が、一部で言われているように、後半はやや風呂敷を広げすぎた感もいなめない。信念に忠実な女性法律家が社会の差別感情に「はて」と疑問を投げかけ立ち向かう姿は痛快で、みな共感を覚えた。そして、法の下の平等という憲法14条が虎に翼を授けたところは、心が熱くなった。

 しかし後半は、憲法14条に関することは何でもござれで、家族法の民主化、家庭裁判所の創設、尊属殺重罰規定の違憲性、同性婚、性自認、外国人差別、少年事件重罰化、学生運動、認知症老人、司法への政治介入、最高裁の保守反動化、裁判官の思想統制、同女共同参画などありとあらゆる現代の問題を詰め込んだ。そのためやや舌足らず、消化不良のまま展開していったように思う。

 ただ、この問題はこのドラマにかぎられない。『次郎物語』や『チボー家の人々』なども前半は痛快で面白かったが後半はやや退屈。『源氏物語』もそういえるだろう。

 この傾向は推理小説やサスペンス小説でもおなじ。前半のナゾがナゾを呼ぶ展開には手に汗にぎるが、後半の絵解きの段階には失望することも少なくない。

 刑事コロンボが好きな視聴者もいるだろうが、ぼくには退屈に思えた。コロンボが論理的に犯人を追い詰めるところが見どころなのであるが、犯人が最初から分かっているのだから醍醐味が不足しているように思えた。

 女性自立と物語といわれる「エイリアン」なども前半はハラハラドキドキで面白いが後半はそれほどでもない。これは人間のもつ不安という本能とも関係していると思う。「案ずるより産むが易し」とか、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」などという、いいまわしがある。実体験までの不安は大きいが実際はそれほどでないこともないことが一般的なのだ。

 ことほどさように視聴者、読者を飽きさせないで最後まで連れて行き、見事な着地を決めることは至難の業だ。起承転結の「転」がキモなのであるが、主人公や「女、子ども」(マッチョな米映画でありがち)の脇役がまんまと敵の罠に落ちていったりすると、「そんなアホなことあるのかなぁ」と思ってしまう。

 ということで、気持ちを入れ替えて、NHK朝ドラは「おむすび」橋本環奈→「あんぱん」今田美桜の福岡(出身)美女リレーだぁ~。って、「虎に翼」で学んだことはどこへ行ってしまったのか・・・。

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