2024年10月16日水曜日

離婚事件(解決)(7)財産分与

 

 離婚の際、夫婦の共有財産を清算するのが財産分与である。夫婦の共有財産は、婚姻後に形成された財産である。これを基本的に2分の1ずつ分けることになる。

 日本国憲法14条(①すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。②以下略)及び24条(①婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。②配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。)の要請により、戦後民法が改正された結果である。すなわち、憲法がさずけた翼の一つである(翼をさずけるというと某エナジードリンクのようだが)。

 たとえば、夫がA社に勤務し、妻が専業主婦であった場合、不動産や預貯金・証券等の財産はすべて夫名義であることが多い。これら財産は、妻が家事・育児をすることで夫婦が協力して形成されたものであるから、たとえ夫名義であっても実質的には夫婦の共有財産である。離婚に際しては、2分の1ずつ分けるのが公平である。

 いまでもオレが稼いだカネをなぜ嫁にやらねばならないというダンナがいらっしゃるが、時代遅れもここまでズレていると御しがたい。時代遅れはカラオケだけにしてほしい。

 婚姻前からの預金やどちらかが相続により取得した財産等は特有財産として、財産分与の対象から外される。夫婦が協力して形成した財産とはいえないからである。

 帰属がはっきりとしない財産はすべて夫婦の共有財産であると推定される。先の婚姻前からの預金であっても、その後、夫婦の家計に組み入れてしまったものは、やはり夫婦の共有財産とされることになる。

 理屈の問題としては以上である。しかし実際の問題としてはいろいろ難しいところがある。夫婦が仲よく、夫の財産がオープンになっていればよい。実際には妻には月々の生活費だけ渡していて、夫名義の財産がどれだけあるのかさっぱりという事件も多い。

 その場合、弁護士の調査能力は限られている。テレビでは優秀な探偵(もしくは興信所)とコンビを組んでいることが多いが、実際にはあまりおつきあいがない。探偵さんたちの料金のほうが弁護士費用のほうが高いし。

 弁護士の場合、弁護士法23条に定める照会や、裁判所の調査嘱託・文書送付嘱託を利用して相手方名義の隠された財産を調査することになる。地元の西銀、福銀やゆうちょはやるとして、そこからどれだけ広げるか。費用もかかるし、裁判所も無制限に認めるわけではないので悩ましい。

 最近の事件は、こうした財産分与をめぐる争いが多い。解決した3件もみなこの問題でもめた。子どもの親権や面会交流権と異なり、お金の問題であるから妥協案はたくさんある。しかし隠された財産が「ない」とはっきりすることはないので、どこまでいってもモヤモヤする。

0 件のコメント:

コメントを投稿