2022年10月13日木曜日

ある遺言無効確認請求訴訟(勝訴)


  ある遺言無効確認請求訴訟について、勝訴判決を得た。高齢化社会のなか、遺言の有効/無効を争う事件も増えた。そうしたなか、相手から遺言の無効を訴えられた。こちらは遺言の有効を主張して防戦した。

相手方が無効を主張する理由は、本件遺言作成当時、遺言者に遺言能力が存在しなかったというにある。

当時遺言者が認知症に罹患していたことは争いない。しかし、認知症に罹患イコール遺言能力の喪失ではない。

民法は遺言能力について、15歳に達した者は、遺言をすることができると定めている(961条)。つまり、成人でなくても、中学3年生程度の能力があれば、遺言能力があるということである。

また、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、・・後見開始の審判をすることできる(7条)。精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、・・保佐開始の審判をすることができる(11条)と定めている。さらに、成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならないともある(973条1項)。つまり、事理を弁識する能力≒遺言能力であり、事理を弁識する能力が著しく不十分であっても、遺言能力はただちには否定されないということである。

認知症にも程度がある。長谷川テストを知っているだろうか。今日は何日ですか、あなたの誕生日はいつですか、さっきこの紙の下に隠したのはなにですか・・などと30問質問する。正解が20点を切ると軽度認知症、12点程度になると重度認知症である(他に、画像診断を行い、脳の萎縮を確認したりもする。)。

認知症も重度になると遺言作成能力がないとされる。むかしは、遺言書の無効が争われても、医学的な理由で無効になることは少なかったのではなかろうか。

最近は増えていると思う。介護保険の導入により、要介護度を判定するようになったからである。その際、主治医意見書が作成されている。要介護度は裏を返せば自立/自立できないの程度を判定するものである。自立できない理由には、身体障害による場合と精神障害による場合がある。精神障害により自立できないとされていれば、遺言書作成能力も否定されることになる。

本件事案の中身は詳しくは書けないが、上記のような事情、証拠により攻防が行われた。その結果、遺言能力の存在が認められたわけである。よかった、よかった。

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