2012年3月8日木曜日

マクニール・『世界史』 by.読書も好きな福岡の弁護士



 『世界史』(中央公論新社)
 ウィリアム・H・マクニール著。

 ジュンク堂で平積みになっていたので
 積ん読していたものに,ようやくとりかかり。

 上巻をちょっと読んだものの
 挫折しそうだったので,下巻から。

 下巻は中世→近代への移行期
 1500年以降の世界史がえがかれています。

 なかなか面白いのですが
 文章が抽象的で意味が分からぬところも多々。

 それでも世界史が偉人列伝ではなく
 大きな潮流に巻き込まれるような,めくるめく感がすばらしい。

 美術でさえ,ダビンチやミケランジェロなどの
 天才の偉業としてではなく

 人類の総合的な美意識の流れとして
 とらえられています。

 たしかに,モナリザを描いたのはダビンチでしょうが
 それを傑作と評価して受け入れたのは同時代人です。

 おそらくダビンチが中世にモナリザを描いても
 だれも評価せず歴史の闇に埋もれてしまったでしょう。

 ルネサンス期にはモナリザを傑作として受容する素地が
 歴史の空気が存在していたことは疑いのないところです。

 ルネサンスや宗教改革がダビンチやルターら偉人の成果
 でないとすると,その原因は“どうしてじゃ~?”(間寛平)

 ということになるのですが
 それは「地理上の発見」です。

 これにより,価格革命,アメリカ大陸の栽培植物,病気の伝播
 世界中の知識と発明のヨーロッパへの流入が起こり

 これらがヨーロッパ人たちの意識を揺り動かし
 ルネサンスや宗教改革を惹きおこしたわけです。

 これによる1648年までの宗教戦争について
 著者は「ヨーロッパの陣痛」と評しています。

 愛を説くキリスト教の新・旧両派の戦争について
 私はこれまでマイナス評価しかしていませんでした。

 しかしこの痛みの激しさが人々を中世の鋳型から脱出させ
 深い意味で近代世界を創造したという指摘にびっくり。

 厳しい経験が,文化的に多様な世界を作り出し
 人間の才能と個人の業績を引き出したのか…。なるほど。

 われわれも東日本大震災の厳しい経験から
 新しい自由な世界を作り出さねばですね。

               ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

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