(千住大橋から下流方面)
さていよいよ深川の芭蕉庵を出発です。お弟子さんたちが前の晩から集まり、船で一緒に見送ってくれました。隅田川を遡上し、千住という宿場で船をおりました。
われわれが司法修習生の時代は、千葉県の松戸に寮がありました。そこから常磐線・千代田線で、上野にあった司法研修所に通いました。前期4か月、後期4か月の計8か月です。
ウナギが名物ときき、でかけたことがありました。北千住の駅でおりました。研修所は起案につぐ起案で、元気をつけようということでした。むかしの旅人もウナギを食べて、前途三千里の旅への精をつけたのでしょうか。
前途三千里の思ひ胸にふさがりて、幻の巷に離別の涙をそそぐ。
行く春や鳥啼き魚の目は涙
これを矢立ての初めとして、行く道なほ進まず。人々は途中に立ち並びて、後影の見ゆるまではと、見送るなるべし。
矢立ては筆と墨壺を組み合わせた旅用筆記用具。矢立ての初めは、旅の最初の句のことです。
いきなりとんで、場面は最終回。おくのほそ道の〆の句は
蛤のふたみに別れ行く秋ぞ
行く春の句を矢立てとし、行く秋の句でしめる。心にくい構成美です。
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