事務所である文書をつくることになりました。
後輩弁護士が起案担当だったのですが、大事な文書なのでついぼくが下案を書きました。
後輩がそれに手を入れるというので、換骨奪胎しないでよ!と注文しました。換骨奪胎について、作品の不当なパクリを意味すると理解し、悪いイメージの言葉として使用しました。
念のため換骨奪胎の意味を確認してみると、なんと、本来は肯定的な意味あいの言葉のよう。すなわち、
「古人の詩文の表現や発想などを基にしながら、これに創意を加えて、自分独自の作品とすること。他人の詩文、また表現や着想などをうまく取り入れて自分のものを作り出すこと」(三省堂 新明解四字熟語辞典)。
和歌における本歌取りのような意味でしょうか。四字熟語は中国の古典からとられ、簡潔な表現のせいか、このように意味が反転してしまう例がすくなくないように思います。
四字熟語ではないのですが、すこしまえ、知り合いの弁護士が、困難な問題について、断じて行えば鬼神も之を避くと述べていました。つまり、よい意味で引用されていました。
なつかしく思いました。ぼくも大学時代にこれを引用したことがあったからです。やはりよい意味で引用しました。
しかし、今般、出典をしらべてみました。手元に『史記』があったからです。するとなんと、これは趙高が李斯に暗殺をうながすときの言葉だったのです。
あのキングダムで有名になった秦の始皇帝の死後の事件。趙高は宦官であり、平家物語の冒頭にも出てくる歴代の悪役の1人。李斯は秦の宰相、暗殺対象は始皇帝の優秀な子どもです。このため秦は優秀なリーダーを失い、短時日で滅びてしまいます。
大学時代の文書の詳細は覚えていませんが、引用の過ちを40年ぶりに知りました。
過ちては即ち改むるに憚るなかれ。当職も、最高裁判事にならい、論語の教えにしたがい、40年前の過ちを訂正させていただきます。ごめんなさい。
(写真は、四王寺山の岩屋城跡にて、どなたかが並べた落ち椿の作品。ニコライ・バーグマンふう。それを美しく撮影してみました。よい意味で換骨奪胎できていればよいのですが。)
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