『女二人のニューギニア』有吉佐和子著・河出文庫を読んだ。例のBSテレ東の「あの本読みました?」に吉本ばななが出演していて、おすすめのエッセイとしてこれを推したから。
オビで岸本佐和子も「面白くないところがひとつもない。
50年以上経っても古びない。
奇跡のようなエッセイ。」と絶賛している。
有吉佐和子の小説は『青い壺』が書店で平積みになっているなど、いままた人気だ。これまた「あの本読みました?」に原田ひ香が出演して推していたり、NHK「100分de名著」でとりあげられたり。
有吉佐和子といえば、われわれにとっては『華岡青洲の妻』である。華岡青洲は江戸時代の外科医。実母、妻らで人体実験をしながら、世界ではじめて全身麻酔をもちいて乳がん手術を成功させた。
有吉作品であるから、単なる偉人伝ではなく、嫁姑の確執もからめられている。こうして書いていると、いま弁護士として日々直面している嫁姑の確執の世界は有吉に教えてもらったのかもしれないとも思う。
さて『女二人のニューギニア』。本作は吉本ばなながエッセイとして推しているように、実話である。自身がニューギニアを訪れた際の悲惨な体験を克明に描いたものである。
舞台はこの西部の山岳地帯の一村落である。いまどき「未開」という言葉を用いていいのかどうか知らないが、この旅がおこなわれた昭和43年当時は間違いなく未開の地である。
そこへ行くにはジャカルタから飛行機を何度も乗り継ぎ、最後はセスナ機で、その後はジャングルのなかを毎日7時間×3日間も歩かなければならない。しかも単純標高差1800メートルの山岳地帯でもある。登り下りが描かれているので、累積標高差はその数倍におよぶだろう。
有吉さんは小説家であるから、ほとんど歩かない。であるからもう無謀というほかない。最後はさすがに歩けなくなってしまう。そしてブタの丸焼きのように木にくくりつけられて、現地の人たちに運搬されてしまう。
なぜ、このような無謀なことになったのか。「ニューギニアは、ほんまにええとこやで、有吉さん」と声をかけられ、うかうかとその話に乗ってしまったのが原因である。
声をかけた主は、有吉の友人である文化人類学者の畑中幸子。畑中は現地でフィールドワークの最中であった。『女二人』うち、もう一人はこの畑中である。
カバー表紙絵をみてほしい。前でへばっているのが有吉で、後ろで厳しく指図しているのが畑中である。ニューギニアでのフィールドワークはあまりにも過酷で、耐えられたのは畑中くらい。他の欧米の研究者はメンタルをやられたりして早々に逃げ出したようだ。
かくて「驚きと抱腹絶倒の滞在記!」ご一読あれ。
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