2025年7月31日木曜日

大雪山~トムラウシ山縦走(11) 五色岳~ヒサゴ沼

 

 五色沼をすぎると、ハイマツ帯。向こうにトムラウシ山。だいぶ近づいてきた。だがこちらもバテバテである。


 途中、お花畑が広がっていたのだが、バテていたので写真を撮る余裕がなく、いきなりヒサゴ沼。はや日が暮れかかっている。テントは5張りほど。もちろん携帯電話は通じない。


 いままさに日が沈もうとしている。山影と雪渓の縞模様と夕陽が沼を鏡として上下対称になっている。荘厳。


 エゾハクサンコザクラ。きょう最後の日光をせいいっぱい浴びようとしている。


 沼の反対側にエゾシカのつがいがあらわれた。しきりに高山植物をはんでいる。


 なぜか一頭だけ残された。沼を渡っている。静かだ。背後の山は二ペソツとウペペサンケ。二ペソツは200名山。いちど挑戦してみたい。

2025年7月30日水曜日

大雪山~トムラウシ山縦走(10)忠別岳~五色岳

 

 忠別岳を登る。暑い。北海道には梅雨がないはずだが、もはや温暖化の影響で暑いし湿度も高い。この日持ち運ぶ水の量を見誤り、軽い脱水症となってしまった。道半ばにして、すでにバテバテである。


 ウコンウツギ(鬱金空木)。鬱金はカレーの色の素となっているターメリックのこと。飲み会のまえにお世話になる人もいるだろう。空木は枝が中空だから。


 振り返ると忠別沼。とりかこむ雪渓の雪形は白馬か白龍か。背後は大雪山、左が旭岳、右が白雲岳。遥かにとおくきたもんだ。


 ミヤマダイコンソウ。



 忠別岳(1963m)登頂!山頂標識の向こうは、深い谷が切れ落ちている。


 谷の向こうは化雲岳、その奥はトムラウシ山である。


 北を望むと、右手に旭岳。手前の台地はなだらかで簡単そうだが、登山者が迷いこんで遭難し、何人もの死者を出している。その左手(写真の外)には忠別湖や旭川市街が見えている。ここは携帯電話が通じる。とりあえずここまでの無事をラインで連絡する。



 忠別岳と五色岳の鞍部。忠別岳がせりあがる。疲れていたためか道迷いしてしまった。この右手をくだると避難小屋がある。水場があるので補給するか迷ったが、疲れていたので先に進むことにした。


 五色岳の登りはハイマツの藪。バテてなんども休憩した。ときおりイソツヅジが慰めてくれる。


 五色岳山頂部から振り返る。右手の忠別岳がはるか後方となってしまった。もう戻れない、先に進むしかない。

2025年7月29日火曜日

大雪山~トムラウシ山縦走(9)忠別沼まで

 

 高原沼方面。見えているのはエゾ沼。北海道のかたちをしているからエゾ沼。ここからはすこし角度が悪いようだ。ヒグマの巣だが、ヒグマは見えない。 


 西側には旭岳(左)と後旭岳(右)。


 前方は高天原がどこまでも広がっている。コンビニやその他の店もなければ、道路も上下水道もなく、公衆トイレもない。携帯電話の電波も届かない。

 あたりまえのことを書いているようだが、こういうところを歩いていると日ごろどんなに便利な生活をしているのか実感する。コンビニも、水道も、トイレも、その代わりになるものを背負って歩かなければならない(ポータブルトイレというのもある。)。




 高山植物もどこまでも広がっている。これはハクサンチドリ。千鳥がたくさん集まっているようにみえることから。

 いちど紹介した花は省略するので、なんの花だったか思い出してほしい。



 ウラジロナナカマド。竈門で七回焼いても焼け残るので。ウラジロは葉の裏が白いので。




 ミツバオウレン。牧野富太郎が愛したバイカオウレンの親戚だろう。


 振り返る。左が旭岳、右は白雲岳。手前に若者ふたり。健脚の若者二人をふたたび追い抜かした。若者のひとりが薬を飲んでいるためだ。

 みな山が好きだ。薬を飲みながら山に登っている。薬の種類はさまざま。このあとヒサゴ沼の避難小屋ではおじさんがインシュリンの自己注射を下腹部にやっていた。これにはビックリした。そこまでしてでも登りたいのだ。


 ようやく忠別岳がまぢかに望めるところまできた。このあたりは例年にくらべ雪渓がおおく残っている。いつもだとシカの群れをみられるのだが、ことしは先行登山者がいたためか見ることができなかった。雪渓の向こうには化雲岳、そのお鉢とゼブラ模様が見えている。


 忠別沼。きょういちばん美しいところだ。例年だとエゾサンショウウオやそのタマゴを見ることができるのだが、ことしは雪渓がおおく水温が低いせいか見ることができない。それでも美しいところだ。ごろりと寝転がって昼寝でもしたい。

2025年7月25日金曜日

大雪山~トムラウシ山縦走(8)高天原

 

 若者2人が健脚であることもあり、こちらが花の写真を撮りながら進むこともあり、どんどん距離がひらいていく。広大でヒグマが徘徊する大雪山系のまんなかで一人になるのは心細い。だが、花の写真を撮りにきたのだから、遅れるのはいたしかたない。



 高天原に入っていく。向こうに忠別岳、五色岳、化雲岳の形成するお鉢、そのまた向こうにトムラウシ山。雪渓と緑のコントラストが美しい。

 大雪山を歩くのはヒグマがいて危ないでしょうと言われる。それはそう。でもこの美しい絶景と広大な開放感にも出会いに行きたいのだ。


 エゾハクサンイチゲ。


 ウルップソウ。


 チングルマ。


 高原沼分岐。ここを左に折れ、三笠新道をくだれば高原沼コースだ。しかしいまの時期、ヒグマが多数徘徊しているため通行禁止になっている。

 大雪山系ではどこでヒグマに出会ってもおかしくない。だからといって全山通行止めにするわけにはいかない。だが、この道はヒグマに遭遇する危険が著しく高い。そのため通行禁止なのである。地元のプロたちが言うのであるから間違いない。


 雪渓の左手が高原沼である(雪渓の向こうは忠別岳)。とても美しいところである。地上の楽園といってよい。ヒグマもどこがよいところか、よく知っているわけである。

2025年7月24日木曜日

大雪山~トムラウシ山縦走(7)白雲岳避難小屋~

 

 二日目の朝。きょう歩くコースを朝日が東(左)から照らしている。

 手前中央の広いところが高天原、その向こうに左から忠別岳、五色岳、化雲岳、いちばん奥の王冠の形がトムラウシ山である。

https://www.google.com/maps/place/%E5%A4%A7%E9%9B%AA%E5%B1%B1/@43.6102727,142.8136937,13z/data=!4m6!3m5!1s0x5f0d2919b0d066f3:0x60a5eafec33c7b38!8m2!3d43.6850658!4d142.8063076!16zL20vMGI3ejh4!5m1!1e4?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDcyMS4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D

 高天原の右手は化雲沢川が流れ、大きく凹んでいる。忠別岳、五色岳、化雲岳がそれをお鉢状に取り囲んでいる。ここもカルデラ地形なのかもしれない。

 本日の目的地であるヒサゴ沼は、化雲岳とトムラウシ山の間の凹地にある。ここからでは見えない。

 あまりにも広大なので、凹凸がないように感じるが、実際はそうではない。またヒグマの多数徘徊する地域でもある。

 この縦走コースで、ここを踏み出すときがいちばん緊張する。ここを踏み出してしまうと、容易には引き返せなくなるからである。


 白雲岳避難小屋をひとり出発する。ハイマツの樹上で野鳥が美しい声で鳴いている。見送ってくれているのだろうか。胸元が赤いのでノゴマだろう。夏、北海道で繁殖する夏鳥だ。


 白雲岳から大雪高原温泉方面へ下り落ちる大雪渓を渡る。


 スレート平。スレートのような平べったい石がたくさん転がっている。

 若者が二人、軽快な足取りで追い抜いていく。ヒサゴ沼のさらに先の南沼野営地まで行くという。すごい健脚。「先に行ってクマを追い払っておいてくだされ」と、半分本気の冗談をいう。


 高根ヶ原が近づいてきた。左手の雪渓の下は大学沼である。広大な高原のヌケ感がはんぱない。


 きょうも花々が出迎えてくれる。黄、緑、青、紫、白、赤、ピンクと文字どおり色々な色。

 チシマキンレイカ。


 ウルップソウ。


 イソツヅジ。


 コマクサ。


 アオノツガザクラ。

2025年7月17日木曜日

大雪山~トムラウシ山縦走(6)白雲岳避難小屋


 白雲岳避難小屋から数十メートルくだったところに幕営地がある。きょうも20張りほど、いろとりどりのテントが張られている。

 それはテント泊のほうが自然との距離がだんぜん近い。しかしテントをここまで運んでくる体力が必要である。悪天候でもガマンできることと。さいきんではヒグマ徘徊の恐怖に耐える克己心も必要である。

 幕営地の背後は白雲岳と水場のもととなる雪渓である。本避難小屋と幕営地はこの豊かな雪渓の雪解け水をあてにして設置されている。

 2,3年前から、ここらあたりまでヒグマが徘徊するようになった。昨年も雪渓の上部を徘徊していた。パンダのようなやつだ。ことしはこの時点ではまだだったが、SNSによると7月6日ころ現れたようだ。ニュースでも頻回にクマの被害が報道されるようになった。気をつけなければ。


 小屋周りは、高山植物が咲いている。雪渓が溶けたところが春で、あわせて夏がやってくる。高山で多様な高山植物が咲く理由だ。

 エゾハクサンイチゲ。


 エゾノリュウキンカ。水場の雪解け水は手を切られるように冷たい。この花はこのような清冽な水が好きなのだなぁ。


 キバナシオガマ。


 ホソバウルップソウ。ウルップ島で最初に発見されたのだろう。


 おや、エゾウサギだ。高山植物をしきりに食べている。しばらくして見物人が増えてきたのを嫌気したのか、ハイマツのなかに逃げ込んでいった。