2024年8月28日水曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(12)

 

 平ヶ岳の登りのつづき。途中、振り返る。高根ヶ原の向こうに白雲岳。左手は旭岳。そのさらに左下が旭岳温泉。

 きのう旭岳温泉を出発し、旭岳に登り、大雪山のお鉢を周回し、北海岳山頂から南下し、白雲岳山麓で一泊、きょうは高根ヶ原を越えてここまできた。自分の歩いたコースを一望できる。






 ことしは花がすくなかったが、それでもところどころお花畑がひろがっていた。


 平ヶ岳山頂部。どこまでも広大。
 

 平ヶ岳のピークを越えると、忠別岳が見えた。手前の水面は忠別沼。右手奥は五色岳や化雲岳の連なり。ようやくひと山(平ヶ岳を)越えた。


 忠別沼周辺は地上の楽園といってよい。誰でもが来られるところではないが、来ることができれば誰もがそれを実感できるだろう。とにかく、どこまでもお花畑がひろがっている。エゾシカたちがカップルで遊んでいたりする。


 沼ではエゾサンショウウオも群れ遊んでいたりする。ちょうどタマゴから孵化したところなのか、産卵にあわせて群れ集まってきたのか。たくさんすぎて、すこし気持ち悪い。


 沼まわりの湿原には木道が敷かれ、それもまたアクセントとなって美しい。忠別沼の向こうに忠別岳。

 沼のほとりでAさん(♂)が憩っていた。ヒグマの巣穴のようなところで人と出会えると頼もしい。

 Aさんとは白雲岳避難小屋でもご一緒したはずだが、記憶が薄い。しかしここ以後、先になり後ろになりしつつ旅をつづけ、トムラウシの山頂以後はずっとご一緒することになった。旅は道連れ世は情け。

2024年8月27日火曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(11)

 

 山中2日目は、白雲岳避難小屋からヒサゴ沼避難小屋まで。

 南を望むと、手前から奥へ、スレート平、高根ヶ原、平ガ岳、忠別岳、五色岳、化雲岳、トムラウシ山から十勝岳まで全部見えている。写真最奥の中央部に写っている王冠状の山がトムラウシ山である。トムラウシ山とその手前にある化雲岳の中間にヒサゴ沼がある。すごく遠い。

 この日が一番リスクが高い。天候や健康の不調を覚えても、エスケープルートが存在しない。とにかくヒサゴ沼まで歩ききるしかない。

写真のとおり雪渓がある。バンドが劣化して軽アイゼンが使えないので心配である。

ヒグマもいる。十勝岳から歩いてきたというおじさんに「クマがいましたか」と愚問を発してしまった。これに、おじさんはこう答えた。「クマはいるに決まっている。クマの住処なのだから。問題は遭うか遭わないかだ。」たしかに。


 10分ほど歩いて振り返ると、白雲岳避難小屋が小さく見えた(中央。左が白雲岳)。はや人間の生活圏を離れ、大自然のなかに入り込んでいっていることが実感された。

 

 スレート平。いかなる造山運動がなせるわざにや、スレート状の石がたくさんころがっている。地名との関連が分かりやすい。


 ホソバウルップソウ。千島列島のウルップ島で最初に発見されたことが名前の由来だ。



 広大な大地のところどころに風のすくないところを見つけて、高山植物が群生している。


 高根ヶ原。雄大。気持ちがいい。ヒグマにでくわさないかとハラハラもしているが。



 左手低くなったところにエゾ沼(北海道の形をしている。)や高原温泉がある。


 しかしこの季節、下ることが禁止されている。なぜなら、道中がヒグマの巣になっているから。高根ヶ原をまっすぐに進むしかない。


 高根ヶ原の向こうに、平ヶ岳(中央手前)、左から忠別岳、五色岳、化雲岳、一番奥にトムラウシ山(王冠状の山)が見える。


 右手には昨日登った旭岳がきれいに見えている。


 きょう最初の登り、平ヶ岳。名前のとおり平たい。それでも登りはきつい。
 


 美しい花々、登りの疲れを癒やしてくれる。
    (つづく)

2024年8月26日月曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(10)


 山中2日目。白雲岳避難小屋2階入口付近で目が覚めた。まずまず眠れたほうだろう。枕が変わり、複数のイビキが鳴りひびくなかでのことだから。

 トイレ(写真右の建物)に行こうとすると、女性が「あれ、あれ。」と声をかけてくれた。指さす方向をみるとー


 エゾシカ(♂)だー!約20メートルの距離か


 人を見て逃げるかと思いきや、どうも東の谷(トイレの背後)へ行きたかったようで、避難小屋前を警戒しつつ通りすぎていった。最接近は3メートルほどの間近。左の角は折れたのか、生え替わる途中なのか。

 声をかけてくれた女性はキタキツネも見たという。残念ながらそれは見逃してしまった(早起きは3文の得)。


 南を望むと、トムラウシ山が見えている。山のうえをピンクのビーナスラインが飾っている。


 残念ながら避難小屋は東を小泉岳に遮られているので、ご来光を直接拝むことはできない。しかしトムラウシ山をモルゲンロートが赤く染めていく。美しい。


 西の白雲岳にも山頂付近に日光があたっている。手前のキャンプ場もごそごそと朝餉の音がする。


 雪渓の手前でなにやら気配がする・・・(写真をワンクリックして拡大しないと分からないだろう)


 雪渓上をエゾウサギが走っている。


 2匹で戯れている。


 小屋の間近まで来てくれた。


 動きが速い。


 ピーターラビットのようだ。

2024年8月23日金曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(9)

 

 白雲岳北面のお花畑からひと登りすると、白雲岳と小泉岳の鞍部に着いた。小泉岳は、岳というより、ご覧のとおり台地である。2グループが散策を楽しんでいた。


 白雲岳と小泉岳の鞍部から南を望むと、ようやく白雲岳避難小屋を見ることができた。写真中央やや右上の丘の上の建物。右手にはテント場も見えている。背後には、明日縦走する予定の忠別岳、化雲岳、トムラウシ山(ややガスがかかっているが)も見えている。

 見てのとおり、小屋は白雲岳から流れきたった雪渓に囲まれている。山小屋立地の条件は水を確保できることである。小屋周りは雪渓の雪解け水が豊富に流れている。ただし、煮沸が必要。このあたりにはキタキツネも多い。キタキツネの排泄物中にはエキノコックスという寄生虫が含まれているからである。


 避難小屋の水場付近にはエゾノリュウキンカがたくさん咲いている。水が好きな植物で湿地に多い。みなさんも実物は見たことがなくても、六花亭の包装紙で見たことはあるだろう。



 ここは大雪山の核心部であり、野生の王国である。小屋周りは水が豊富で高山植物が豊富であるから、エゾシカの兄弟も現れた。ということは・・・


 ヒグマも現れた。単身。目のまわりが黒く、なんだかパンダのようだ。こちらの様子をうかがっている。幸い200メートルは離れている。安全だ。

 昨年は7月上旬に母子のクマが現れたため断念した経緯があった。ことしはそれを慮って、日程を1週間早めたのだが、早くも現れた。

 みなさんはクマが恐ろしいというが、出会い頭の事故を避ければそれほど危険はない。クマも人間が怖い。こちらの存在に気づけば、向こうで避けてくれる。


 ようやく着いた。白雲岳避難小屋である。管理人はいるが、食事の提供はない。自炊である。少なくともクマの襲撃からは守られている。
 
 25人程度泊まれる。ハイシーズンではないはずだが、この日はほぼ満杯だった。よい場所は残っておらず、2階の入口付近をなんとか確保することができた。


 夕食後、憩っていたら、ミヤマアズマギクがやさしく咲いていた。なんという幸せ。

2024年8月22日木曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(8)

 

 さて北海岳山頂から白雲岳(右手)と小泉岳(左手のなだらかな高まり)が見えている。

 ここから、白雲岳と小泉岳の真ん中にある鞍部を越えて(鞍部手前に雪渓が見えている。)、その向こうに建っている白雲岳避難小屋まで行かなければならない。

 さてこの風景のなかにお花畑があるのだけれども、どこだか分かるだろうか?


 だいぶ歩いてきた。白雲岳の膝元までやってきた。白雲岳北斜面に雪が残って雪渓になっている。

 お花畑は、意外なことに、このような雪渓の周りに広がっている。われわれにとって雪は冷たく、人命を奪うものである。しかし、高山植物にとっては違う。

 大雪山では、風衝地と呼ばれるところが多い。風が強すぎて、雪も吹き飛ばされて積もらない。雪がなければ、冬の間気温が氷点下20度にも30度になってしまう。これではいかな高山植物でも生育できない。しかし、雪が積もる場所だと、雪がクッションとなって0度程度で保たれることになる。

 そこでは雪渓が解けると春がやってきて、高山植物がどんどん花を咲かせることになる。そのため雪渓の周りはお花畑になっているのである。















 みんな「私を撮ってー」と言っているようだ。実際には、蝶や蜂などの虫に対し、「私の蜜は甘いわよー(やってきて、ついでに花粉を運んでー)」と言っているのだが。どの子も可愛くて、足をとめて写真を撮ってしまう。さっき撮ったのと同じ種類の花だとは思うけど、どの花も可愛い。かくて先に進めなくなるのである。