ここのところ遺産分割調停事件がつづけざまに5件解決した。
遺産分割事件は、相続人の数・親疎と遺産の内容によって難しさが決まる。相続人の数が増えれば増えるほど、相続人どうしが親しくなければないほど困難さは増す。ときには数次相続など、被相続人が複数いらっしゃる場合もある。遺産の内容が現金だけであれば分割しやすいし、不動産だけであれば分割が困難だ。
1件目。相続人は伯母と姪2人、福岡と関東であまり交流はなかった。福岡の伯母から依頼を受けた。遺産は比較的広い土地がひとつだけ。現物分割といって、不動産を2筆に分割した。問題は分割の仕方である。相手は2等分を要求し、当方は広い道に接しているほうを狭くする案を提案した。交渉が決裂したので、調停を申し立てた。結局、当方の案が通った。
2件目・3件目。被相続人がお二人。相続人は共有している方々とそうでない方々に分かれた。どちらもめぼしい遺産は不動産のみ。これらも交渉で解決できず、調停となった。遺産を売却して、代金から経費を差し引き、残ったお金を分配した(換価分割)。争いになったのは経費のなかみ。不動産を売却するのだから、建物解体費、残置動産(家財道具)の処分費用、測量費、譲渡所得税・市県民税・税理士費用、登記費用はOKとなったが、弁護士費用はダメとおっしゃるかたがいたのでその方の分だけ控除できなかった。
4件目。相続人は5人。被相続人と懇意にしていた方が当職の依頼人。遺産は主に不動産。相続開始後、近所のクレームを受け、不動産の管理費を支出されていた。これも調停に。他の相続人は、4人のうち、1人は成年後見人が、1人は未成年後見人がついておられた。さらに1人は東京の方で、一度も出席されなかった。難しかったのは後見人の先生方。不動産を売却して分配しようとしたが、経費についてうるさく注文をつけ、代償金による解決を要求した(代償金分割)。依頼人の了解を得て、なんとか解決することができた。
5件目。相続人は妻、子二人。子の一人から依頼を受けた。交渉で解決せず、遠方の家庭裁判所に調停を申し立てた。遺産は主に不動産。不動産の価格が主な争点となった。遠方の不動産ゆえ、時価の把握が困難だった。また相手方から、新民法で新たに創設された配偶者居住権の主張がなされた。協議を重ねるうち、相手の譲歩を引き出すことができ、無事解決することができた。
福岡市や筑紫地区は不動産市場がひきしまっていて、売りに出せばすぐに買い手がつく。そして比較的高値で売れることが多い。そうでない場合に比べて、遺産分割事件を解決しやすい。現金は分割しやすい。不動産は分割しにくい。売買できれば不動産が現金に変わるわけだから、遺産分割が容易になる。
しかし逆に困難になる場合がある。未解決な事件はそんなケースだ。現物分割や換価分割ができればよい。しかし代償金分割となると、不動産の評価があまりに高いと代償金が用意できなくなってしまうからだ。このため、ある事件がいまだ解決できず調停がつづいている。解決できた暁にはまた報告したい。
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