2023年12月1日金曜日

U弁護士の事件簿①-黒百合事件

 
 
 わが事務所にはオンラインのスケジュールボードがある。7人の弁護士、9人の事務局の予定が一覧できるようになっている。

これにより、各弁護士のスケジュール管理、事務所会議、弁護士会議、事務局会議、共同受任事件など複数弁護士・事務局の日程調整や新規相談の担当決めなどを行っている。便利だ。

本日をみると、顧客との相談や打合せのほか、U弁護士が破産債権者集会、TN弁護士が精神保健審査会、TM弁護士があいゆう電話相談、M弁護士が芝居の稽古などで外出することがわかる。

TN弁護士らのボードにはアスベスト訴訟、TM弁護士のボードにはHPV訴訟や結婚の自由訴訟などの用事が書き込まれていることが多い。

かように、ボードには相談者・依頼者の名前や、事件名、参加する団体・行事名などが多様に記載されている。

忘れるといけないから、公的な行事だけでなく、私的なイベントも書き込んでいる。つまり、プライベートもある程度、事務所内では筒抜けである。

そんなある日。U弁護士のスケジュール欄に、12月1日9時から「黒百合」と書き込みがなされた。黒百合?黒百合様だろうか、黒百合事件だろうか?

なにか不穏なにおいがする。黒歴史とか黒執事とかに連なる。花言葉には呪いというのがある。あまりよい印象ではない。

秘書さんたちの間ではさまざまな憶測が流れた。あれはU弁護士がおつきあいしている女性の名前かもしれない。きっと悪い女にちがいない。・・

きのう夕方、そうした憶測がふくらんで頂点に達した。そしてついに、真相があかされた。「ああ、あれ? あれは山小屋の名前。」。えーっ。

黒百合は岳人の間で人気の高山植物である。他の高山植物のように、どこででも出会えるというものではない。希少価値が高いのである。

ここで「黒百合」というのは、八ヶ岳にある黒百合ヒュッテという山小屋の名前である。天狗岳の北側稜線沿いにある。八ヶ岳を縦走する際、便利な小屋である。

https://www.yamatan.net/hut/kuroyurihutte

U弁護士はその小屋での年越しを計画していた。新年を雪山で迎え、初日の出を雪の稜線で拝したいと。

コロナ禍以降、山小屋は予約が必要である。その予約は1か月前からでないと、受け付けられない。その予約をするのを忘れないよう、12月1日9時の蘭に「黒百合」と書いておいたのである。

・・・けさ7時20分、ネット予約をすべく小屋の空き状況を確認した。すると、なんともう満室。

https://www.yamatan.net/hut/kuroyurihutte/plan?year=2023&month=12

うぐっ。岳人が考えることはみな同じ。しかも朝が早い。行動が早い。しかたがない、プランBを考えないといけない。

かくてきょうもU弁護士の孤独なたたかいは続くのだった(「孤独のグルメ」を踏まえて)。

                                   (つづく)

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