板東真佐子は1958年3月30日生まれであるから、われわれと同年代、自分より半年だけ年長である。
高知県出身。高知県出身の小説家といえば、宮尾登美子。『櫂』で注目されて以来、緻密な構成と、時代に翻弄されながらも逞しく生きる女性を描いた作風で多くの読者に支持された。高知の花柳界で育った体験を生かした自伝的作品のほか、芸道物、歴史物のモデル小説に優れるとされる(ウィキ)。『山姥』が宮尾作品の影響を受けていることは間違いないだろう。
高知県出身者といえば、いずれもNHK朝ドラ主人公のモデルである牧野富太郎博士(植物学者)ややなせたかし(漫画家)もいるが、彼らの影響を受けていることは感じられない。
坂東眞砂子は奈良女子大出身。小説家としては異色なことに学部は家政学部住居学科である。その後イタリアに留学し、ミラノ工科大学等でイタリアデザインを学んでいる(ウィキ)。
ジブリアニメ『耳をすませば』で、読書好きの主人公の中三女子・雫が知り合ったやはり読書好きの青年・聖司はヴァイオリン職人になるためイタリアのクレモーナに留学してしまう。映画をみたときは唐突な感じがしたが、自分の世界観が狭かっただけなのかもしれない。
いまどきはビジネスでさえ基本にはデザインが必要とされているので、『山姥』の構成や細部の描写に、イタリアで培ったデザインセンスが生きているといわれれば(誰も言っていないかもしれないが)、それはそのような気がする。
帰国後は、フリーライターを経て、寺村輝夫の主催する童話作家育成雑誌『のん』で認められ、児童向けファンタジー小説で作家としてデビュー。ホラー小説と呼ばれるジャンルの作品も多いが、「死」と「性」を主題とした作品が特徴である(ウィキ)。
寺村輝夫は、『王さまシリーズ』『こまったさん』『わかったさん』の各シリーズ、『かいぞくポケット』など、子どもたちが小さいころ世話になった。少なくとも、『山姥』に寺村輝夫の影響は感じられない。前日に書いた『うまかたやまんば』や『くわずにょうぼう』などを通じた間接的なものは知らないが。
1996年に本作で直木賞を受賞している。ちょうど30年前である。30年前といえば坂東眞砂子は37歳になっていただろうか(当職は36歳)。37歳当時の自身と引き比べ、30代で直木賞を受賞するとはすごい。
当時、本屋で平積みになっていた記憶はある。だが、弁護士として多忙であった時期であるせいか購入には至らなかった。なにごとも出会い、本とも出会いである。
著者は残念ながら2014年1月佐川町で没している。55歳の若さ。舌癌だったようだ(ウィキ)。若い人たちにはどうということのない話だ。だが、ほぼ同い年の筆者にとっては他人ごととは思えぬ話である。
こんかい『山姥(上・下)』はAmazonを通じて古本を購入した。新刊の在庫がなかったからである。これほど面白い本で、かつ直木賞受賞作にして、30年で新刊の在庫がなくなるとは寂しいかぎりである。
0 件のコメント:
コメントを投稿