民事事件とは何か。一般の人にはわかりにくく、誤解も多い。まず、刑事事件との区別がついていない人が多い。
民事事件は弁護士に相談しなければならない。刑事事件は警察に相談しなければならない。刑事事件は犯罪でなければならない。
たとえば、ラーメン屋で無銭飲食をしたとする。ラーメン屋に入る前に財布が空であることを知っていれば詐欺である。しかし、食べたあと財布が空であることに気づけば詐欺ではない。
詐欺罪で有罪にするには店に入る前に財布が空であることを証明しなければならない。人の頭のなかを観察することはできないので、なかなか詐欺で立件することは難しい。つまり、警察はうてあってくれない。
この場合でも、ラーメン屋は無銭飲食者に代金もしくは損害賠償を請求することはできる。これが民事事件である。
刑事事件は国家対個人、民事事件は個人対個人(ときに国家賠償請求事件など国や自治体が相手となることはある。)である。
刑事事件では有罪が確定した被告人に罰金や懲役刑などを命じ、これを強制することができる。副産物として被害者に対する謝罪や被害弁償をひきだすこともできる。
民事事件は基本的に金銭的な解決にかぎられる(謝罪広告や、家・土地に明け渡しの強制執行など例外はある。)。相手方に謝ってほしいという人もいるが、裁判官であっても民事事件でこれを命じることはできない。せいぜい慰謝料額を増額するぐらいである。
金銭的な解決(判決)は債務者が任意に履行しなければ、民事(強制)執行によることになる。民事執行は債務者の財産の差押えである。
債務者に不動産、預貯金、給料などの財産があれば、これらを差し押さえることができる。しかし、財産をもたなければこれをすることができない。
財産をもたない人が最強の債務者である。われわれも債権回収を頼まれることが多い。債務者に財産がないために回収ができないことも多い。自己破産されれば、なおさらである。
福祉施設の経営者Aは設計士が経営する設計会社Bに福祉施設の建設を依頼し約500万円を支払った。1年が経ったが、約束どおりに進行していない。
設計図面はできていないし、役所の許認可も得られていない、補助金を得るのに必要な建設業者の見積もそろわない。このままでは補助金や銀行融資の内諾も打ち切られてしまう。危機的な状況だ。
かくてAから代金回収の依頼を受けた。まず、この種の事件でいつも世話になっている建築士Cに相談して業界の実情をきいた。そのうえで、Bに対し内容証明郵便をだし、現在までに作成済みの図面等の持参し、現状を説明するよう要求した。
Aの立会いのもと数度の交渉を経て、建築確認に必要な図面さえ未完成であることが判明した。やむを得ず契約を解除し、上記代金と損害賠償を請求した。
Aはとても寛容な人で、上記契約代金さえ返してもらえば損害賠償のほうは免除してもよいという意向を示された。いささか寛容すぎるとは助言したが、依頼人の意向には逆らえない。
一括返済は難しいとのことで、3回に分割して支払い、約束が果たされないときは損害賠償金を含めて支払ってもらうという示談をした。
分割金は3か月にわたり支払われた。Aの被害回復として万全ではなかったが、早期に最低限の賠償を得ることはできた。肝心の福祉施設の建設のほうも、上記建築士Cの関与のもと順調に進行しているようだ。よかった。
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