2026年2月6日金曜日

預貯金の無断引出など相続争い(和解成立)

 

 相続争いは争族といわれる。むかしは、①前妻の子たちと後妻、②亡くなった長男の妻子と長男の弟たちのような、もめる原因が分かりやすい対立構造が多かった。

 類型①は、前妻の子たちは父をとられたという想いがあるし、あるいは、前妻vs後妻の代理戦争の意味合いもあったりする。

 類型②は、たとえば、田中家の田畑を長男であるという理由で長男が継いだところ、長男が早逝してしまった。そうすると、長男の弟たちとしては、田中家の男子として、なぜ田中家累代の遺産を外から来た長男の嫁たちにむざむざと渡さなければならないのかという想いがあった。

 しかし、最近は、兄と妹、姉と妹のような普通の兄弟間でも激烈な相続争いがある。

 今般、その一つが和解解決した。当事者はAB姉妹。妹のBから依頼を受けた。

 事案は複雑で争点は多岐にわたる。主に争われたのは亡父の遺産について。だが、亡母の遺産についても争われた。

 亡父は遺言書をのこし、遺言執行者にはAを指定していた。

 亡父は遺言書で、Bには実家の土地・建物と甲銀行の預金をのこした。Aが東京に在住しているのに対しBが地元に残っているので、実家の土地・建物をBにのこしたものと思われる。

 問題は甲銀行預金である。Aは亡父の生前からこの預金を管理していて、無断で払い戻してつかっていたし、亡くなった後もこれをつかった。預金残は40万円ほどだった。

 Bの代理人として、Aに対し、無断で払い戻した預金の返還を請求した。あわせて、預金残40万円を交付するよう要求するとともに、実家からの退去(私物の撤去)を請求した。しかしAはこれに一切応じなかった。

 遺産分割は家裁の管轄で、まずは調停を申し立てなければならない(調停前置主義)。裁判所はむやみに家庭に入らないという考えによる。本件でもまずは調停を申し立てたが、裁判所は遺言書があるのであれば、調停の対象にならないとして受理しなかった。 

 そこで、地方裁判所に対し、Aに対する損害賠償もしくは不当利得返還を請求する裁判を提起した。あわせて、上記預金の交付と実家からの退去を請求した。

 預金の無断引出については、あれに使った、これに使ったなどと未整理なまま主張してきた。預金残については自分で回収するればよい、退去はこちらでかってにやれなどと反論してきた。さらには亡母の預金も返せという。かくて争点がはっきりしないまま期日を重ねることになった。

 相手方には、頭がよい、あるいは、じぶんで頭がよいと思っていて、はやくから争点をしぼりこんでくるタイプの弁護士がついてほしい。速球をバンバン投げ込んでくるタイプはたたかいやすい。これに対し、軟投型でいつまでも事案がふわふわしているタイプの弁護士は苦手である。本件は後者だった。いつまでたっても争点がぼやっとしている。

 本訴の管轄は福岡地裁本庁(福岡市中央区六本松)ではなく、普通電車で2時間以上、前後をあわせると3時間以上かかる支部であった。むかしであれば、毎回出頭するのに時間と労力をとられたことであろう。いまは、事務所にいながらにしてオンラインで手続をすることができる。これで助かった。これがなければ、延々と出張を強いられたことだろう。

 裁判官も、途中から業を煮やし、和解案を示した。そして途中で和解案は修正された。和解案はむやみに修正してはいけない。権威を失い、したがう気持ちがなくなるからである。しかし、修正が行われた。相手方が主張する使途について細かな認定を強いられる判決は書きたくなかったのだろう。気持ちはよくわかる。

 さらに問題を難しくしたのは地裁と家庭裁判所の管轄問題である。地方裁判所は遺産分割事件には手を出せない仕組みになっている。亡母の遺産分割のことは手を出せないのである。

 (中略)

 裁判所の積極的な和解勧奨もあり、なんとか和解をすることができた。亡母の遺産分割も含めてである。少々時間を要したが亡母の遺産分割事件を家庭裁判所でやることを思えば、まずまずの解決であったと思う。

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