NHKの番組でダークサイドミステリーというのがある。ふだんはまず見ない。が、タイトルが「神秘の古代ミステリー徹底検証!日本・ユダヤ同祖論」だったので、つい見てしまった。
https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/episode/te/MP1M81N4XL/
なぜなら、今年の正月に諏訪大社を参拝した際、大社の祭りの責任者をつとめたことがあるというタクシーの運転手さんの話を聞いたから。彼によると、縄文時代、諏訪盆地にユダヤ人が移り住んできて、それが諏訪大社信仰のもととなっているという。
「ああ、あれね。」とわかったかたには、わがブログの「ディープなファン賞」をさしあげよう。
運転手さんの論拠は、記事にあるとおり祝詞とユダヤ語の共通性などだったが、詳しいことはもはや覚えていない。
ダークサイドミステリーによると、同祖論の論拠はいろいろある。
①謎めいた「かごめかごめ」はヘブライ語の暗号か?
「かごめかごめ」の歌詞がヘブライ語とそっくりだという。
②京都に古代イスラエル・ダビデ王をまつる神社がある?
古代秦族は、ユダヤ12族のうち行方不明となったものの末裔であるという。
③「ダビデの星」が各地の神社にある?
「ダビデの星」というのは△と▽をあわせて星形にしたやつだけれども、日本各地の神社にそれが飾られているという。
④赤い鳥居やこま犬の存在?
「これらの共通点はとうてい偶然とは思えない。だから、日本人とユダヤ人はおなじ祖先をもつのだ。」これが古代ミステリーとしてネットや本で話題の日ユ同祖論である。
番組にはヘブライ語の専門家が出演して、ヘブライ語との共通性を否定。片言隻句をとらえるという表現があるが、「かごめかごめ」の歌詞はどうやらその類のよう。その他の論拠についても、全否定。いちいち納得。
つづいて歴史的検証。そもそも同祖論は明治期から。訪日した外国人が日本の結婚式を目撃して、「これってユダヤの結婚式とそっくりじゃん。」と同祖論を展開した。
その後、時代の変化につれて隆盛したり下火になったり。論者たちがなぜ同祖論を信じたいかといえば、日本人のルーツを旧約聖書で基礎づけたいから。日本民族は神に認められた民族である、と。
日独伊三国同盟が締結されると、ドイツに遠慮して下火に。ユダヤ陰謀論との関係も、つまみ食い的に信じたいところだけ信じる。みたいな。
いまの科学水準からすれば、同祖論は遺伝子レベルで立証できるはずだ。
しかし現状、ネット上でそうとう流布しているらしい。なぜなら、そのほうが楽しいから。たしかに、諏訪大社に参拝してきました!というだけより、諏訪大社はユダヤが起源らしいと書いたほうが、へぇ!?と興味をひきそうだ。
が、まだ娯楽でそのような言説を消費しているうちはいい。しかし、自分が信じたいものを信じるという心性は危険。
弁護士をやっていると、こういう心性の人によくでくわす。ただもう信じたいものだけを信じて生きている感じ。裁判制度は、これら盲信をディベートや客観的な証拠により排除していく努力のあらわれであるといってよい。
こうした心性は自分のアイデンティティーの弱いところ、不安定なところに発しているという自覚が必要だろう。そうでなければ、ナチスのユダヤ人虐殺や関東大震災のときの朝鮮人虐殺のようなことをふたたびしでかしてしまうことになるかもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿