NHKの番組で、投資詐欺、国際ロマンス詐欺の被害者ら多数から着手金50億円集めた弁護士の実態が紹介されていた。
被害者たちは、弁護士に高額の着手金を支払っただけで、なんの仕事もしてもらえていない。投資詐欺、国際ロマンス詐欺に遭い、ふたたび着手金詐欺に遭ったわけだ。泣きっ面に蜂である。
投資詐欺、国際ロマンス詐欺にかぎらず、詐欺被害の法的回復はむずかしい。そもそも加害者の実名や住所が分からないし、分かったところで民事裁判・民事執行により満足を受けられることはまずない。
これは昔からそうだったのであるが、最近、東南アジアの奥深くに拠点を置く詐欺集団の実態が報道されるようになって、一般の人にも理解しやすくなったと思う。
刑事事件となれば、なにがしかの返済は受けられるだろう。しかし一般に警察は詐欺被害にうてあってはくれない。被害者が1000人ともなれば動いてくれることもある。しかしその場合、被害者が多数であるがゆえに被害者に返金されるものはわずかである。
それほど詐欺被害について加害者に責任追及することはむずかしい。これに費用をかけることは泥棒に追銭である。そのため、自分のところへ相談に来られたときは、あきらめるよう説得するようにしている。泣き寝入りであるが、やむをえない。
NHKの番組に登場した弁護士たちも、はなから詐欺被害を回収できると考えていたわけではなさそう。背後に詐欺を企画・主導した主犯がいて、弁護士はその名義を利用されただけのようだ。すくなくとも本人たちはそう弁解している。しかし責任はおおきい。
ネット社会がこれに拍車をかけている。ネット社会でなければ50億もの着手金を集めることはできなかっただろう。被害者たちはネット広告や電話で担当者と話しただけで、弁護士とは会ってもいないし、話してもいない。
会ったこともない弁護士を信頼するというのもいかがなものかと思うけれども、それがネット社会というものだろう。われわれだってカードを利用したり、インターネットを利用して航空券や書籍を購入したりして高額な取引をしているが、カード会社や航空会社の社長と面談などしていないから。
債務整理や自己破産の分野でも似たようなことが起こっている。派手な広告をうっている東京の事務所に、高額の費用を支払って依頼したものの、うまくいかないで途中で放り出されたという相談が増えている。
借金で首がまわらなくなったのに、さらにいいかげんな弁護士や司法書士に高額な費用を支払わされている。いいかげんな仕事をして途中で放り出されて、別の弁護士に救済を求めてきている(もちろん、むずかしい事案というのはある。われわれがやっても事案の難しさゆえ、うまくいかないこともある。でもそれとは次元がちがう信じられないようないいかげんさである。)。
筑紫地域の人たちが東京の弁護士や司法書士にこんなめにあわされたと知って憤りを覚える。しかしそれはわれわれの努力が足りなかったせいでもある。こうした被害がすこしでも減るよう努力をつづけていくしかない。
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