2012年2月17日金曜日

『二流小説家』(The Serialist )



(雲仙・妙見岳1,333m
 雲仙岳は、最高峰の平成新山(1,483m)を中心に、普賢岳(1,359m)
 国見岳(1,347m)、妙見岳などの山々からなっており、その山行は
 ぐるぐるとアトラクションをめぐるような感覚が味わえます。)

 ディウ”ィッド・ゴードン(青木千鶴訳)による
 『二流小説家』(早川書房)。

 帯によると、こう。
 史上初、三冠達成!

 このミステリーがすごい!
 2012年版 海外編(宝島社) 第1位

 週刊文春ミステリーベスト10
 2011年 海外部門 第1位

 ミステリが読みたい!
 2012年版 海外編 第1位

 連続殺人鬼から届いた告白本の執筆依頼。
 売れない作家の運命は劇的に変わる!

 以上。
 …

 というわけにもいかないので
 以下すこし解説を。

 司馬遼太郎の小説と一口に言っても
 前期と後期では作風に違いがあります。

 新潮文庫に入っている『関ヶ原』や『国盗り物語』と
 文春文庫に入っている『龍馬が行く』や『跳ぶが如く』の違いです。

 前者は構築的で冗長なところがなく
 後者はうんちくを語りながら、のびやかな筆致で話がながいです。

 ぼくは少なくとも若いころは
 前者のほうが好きでした。

 司馬遼太郎が古本屋で仕入れた高価なタネ本を片手に
 ながながとうんちくを語りはじめると、またか~とため息が。

 でもファンにとっては
 そこがたまらなく好いのでしょうね。

 The Serialistのばあい、主人公が二流小説家なせいか
 いろんなジャンルに話がとんで脱線します。

 (実はそれが重要な伏線になっていたのかもしれませんが
 ちょっとうかつに読んだので気づきませんでした。)

 ミステリの途中で吸血鬼ものに脱線したりします。
 それはそれで魅力的な世界で続きが気になるのですが。

 ま、ディズニーワールドに行ったつもりで
 いろんなアトラクションを楽しむという感じでしょうか。

 さて本書もミステリなので、冒頭「おもな登場人物」が紹介され
 もちろん、犯人はこの中にいるわけです。

 で、なかなかうまく予想を裏切られ
 う~ん、してやられた!という仕掛けになっています。

 つまり、いわゆるパズル(論理・数学的な解法)としては
 よくできています。

 ただし、なにがしかのプロとしての弁護士の立場からすると
 この人物造形には無理があると考えます。

 でも、多くの人たちが今年のベストミステリというのだから
 そこは小さなキズなのでしょう。

 ま、ディズニーワールドでそのようなことをいうのは
 野暮な話です。

 十分に楽しめるアトラクションの数々であることに
 間違いありません。みなさまも一度行ってみてはいかが?

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