2011年9月28日水曜日

 美容室で髪型がおもいどおりにならなかったら?



 最近の判例集に紹介されている事例
 から。

 顧客がヘアカタログのデザインを見せてカットを依頼したが
 カタログどおりの髪型にならなかった場合

 美容師に美容契約上の債務不履行責任があるのか?
 が問われています。

 東京地裁の平成17年11月16日判決というのがあり
 キャバクラ嬢の請求を認め、慰謝料の支払いを命じています。

 本件は神戸地裁の平成22年10月7日判決であり
 原告の請求を棄却しています。

 当初の指示に応じて髪を短くカットした後に
 別のデザインへの変更を求めた。

 これがおもいどおりの髪型にならなかった原因であると
 判断されたためです。

 結果的に顧客の指示とは異なる髪型となったとしても
 そのことのみでただちに債務不履行責任を負うわけではありません。

 求められたデザインの髪型とするために合理的なカットの手法を採用
 すれば、美容契約上の義務違反は生じないというわけ。

 ま、きわめて妥当な議論だと思います。
 この結論に落ち着くために、裁判が必要なのか?

 しかも勝訴判決である東京地裁が認めた慰謝料も7万円です。
 経済的にはまったく引き合わなかったはずです。
 
 でも毎日のように、経済的合理性を欠く訴訟を依頼される顧客が
 あふれているのが法律事務所です。

 人はパンのみにて生きるにあらず
 ほんとうに大切なものは目に見えないんだよ…というわけです。

 このような考え方をドイツの法学者イェーリングは
 「権利のための闘争」と呼んでいます。

 デア・カンプ・ウムズ・レヒト!
 指導教授のドイツ語発音が思い出されます。 

 イェーリングの著書は「法の目標は平和であり、それに達する手段は
 闘争である」という有名なことばをもって始まります。

 他人から権利侵害を受けたとき抗議闘争をするのは
 単なる損害の回復ではなく、人格の回復である。

 権利のための闘争は、国家社会の法秩序の維持に役だつのだから
 各人の社会に対する義務である。

 かくて経済的には引き合わなくとも
 人は権利のための闘争を挑もうとします。

 私どもとしては、冷静な対応をまずは呼びかけますが
 場合によっては、そのような闘いに参戦せざるをえないときもあります。

 さて今日はどのような闘いが待っているのでしょうか?
 

0 件のコメント:

コメントを投稿