2010年10月28日木曜日

 明日には歌も~企業団体献金に反対~



 「おまえさ、昔の人間が選挙権を得るために、どれだけ苦労したか知ってるのか」

 「またそれかよ。いいか、俺はな、今の自分の生活に一生懸命で、
 政治だとかそういうことにはさっぱり興味はねえんだよ」

 「あのな、無関心でいるといつの間にか洪水に呑まれてるんだぞ。分かるか?
 政治家に目を光らせろ、さもなければ、明日には歌も取り上げられる」

              伊坂幸太郎さんの「グラスホッパー」から殺し屋の岩西

 
 民主党が企業団体献金の受けとりを再開する方針を決めました。
 私は反対です。

 民主党の政権公約は、企業・団体からの政治献金の「全面的な」禁止。
 なぜでしょうか?

 「権力は腐敗しやすく、絶対権力は絶対的に腐敗する。」
 造船疑獄、ロッキード事件、佐川急便事件、リクルート事件…。
 「政治とカネ」が問題となるゆえんです。
 
 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受したときは5年以下の懲役。
 問題は法案(政治)の買収です。

 法案が廃案ないし関係業者に有利に修正されるように
 国会における審議、表決にあたって自らその旨の意思を表明すること
 および、委員会を含む他の議員を説得勧誘することを依頼して
 金員を供与すれば職務に関してなされたことになります。
 
 職務に関する行為は不作為でもよく
 議員がことさらに欠席して議事に加わらないことも職務行為。 

 ある法案が審議されると、関係する業界から政治献金が著増します。
 法案を業界に有利に変えたいからでしょう。
 裏を返せば、われわれ国民の利益、民意に反する変更になります。

 利息制限法を超える高金利がグレーゾーンとして生き延びたのは
 延命をゆるす法律がつくられたから。
 これにより多くの国民が夜逃げ・自殺を強いられました。

 企業団体献金の授受は贈収賄と区別がつきません。
 たとえ数十万円であってもお金を受け取っていながら
 それと無関係に法案を審議することなどできるわけがありません。

 だからこそ民主党は企業・団体献金の「全面的」禁止を公約したはず。
 
 今回のエクスキューズは
 ①政府等との契約が1件当たり1億円に満たない企業・団体について
 ②巨額の献金を受けて癒着が疑われることがない範囲で
 おこなうから大丈夫という。

 これはまったくおかしな議論。
 1億円の契約はないけれども法案を自己に有利に修正してほしい
 そういう企業・団体は無数にあります。

 中元、歳暮における社交上の慣習、儀礼とみられる程度の贈物でも
 公務員の職務に関して授受されるときは、賄賂罪が成立します。

 10万円の賄賂を授受して有罪となった例は枚挙にいとまがありません。
 異性間の情交も賄賂とされています。

 「癒着を疑われることがない巨額の献金」って
 いったいいくらを考えているのでしょうか?

 法案(政治)の買収は、われわれの選挙権が踏みにじられるのと同じ。
 選挙権は憲法15条の保障する人権であり
 人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果です(憲法97条)。 

 「おまえさ、昔の人間が選挙権を得るために、どれだけ苦労したか知ってるのか」
 と自分につっこみを入れる必要があります。

 選挙権を得るために苦労した昔の人間に
 坂本龍馬も含まれるでしょう。

 龍馬は「船中八策」のなかで
 「政事は公議を以て決定する事」
 をうたっています。

 「政事を企業団体献金を以て決定する事」
 龍馬はこれにきっと反対したはずです。
 

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