2025年11月13日木曜日

ある遺産分割協議・交渉事件

 

 さいきんは経済的な困難が深まっているせいか、相続争いが激烈化することが少なくない。

 むかしは、前妻の子と後妻、亡くなった長男の嫁とその他の兄弟など、家族関係が複雑なケースでもめることが多かった。しかし、さいきんは、兄と妹など普通の家族でも激烈にもめることがすくなくない。

 そんななか、ある遺産分割協議について、交渉で解決することができた。依頼人は前妻の長男Aである。父と母の間に妹Bがいる。もうひとりの相続人は後妻の子(腹違いの妹)Cである。

 先にのべたとおり、この家族関係はもめやすい。ひとりの父をめぐって心理的にとりあいになっているからである。

 Cは住所調査で岡山に住んでいることが判明した。まずは手紙で情況を説明し、遺産を3等分することを提案した。ただでさえもめやすいので、法律の定める法定相続どおりでいきましょうという提案である。

 返事がないことも多いし、他に遺産を隠しているだろうなどと詮索されることも多い。

 しかし、Cの返事は遺産はいらないというものだった。父はCの母ともまもなく離婚しており、Cは父のことをあまり知らないからとのことであった。いわゆる母子家庭であるから、苦労したであろうに、そのような恨みつらみは一切口にしなかった。

 Aがひとこと挨拶をしたいということであったが、Cはそれも断られた。

 Cの現状はそれ以上はわからない。しかし、遺産をめぐって父母をおなじくする兄妹間であっても激烈に争うことの多い現状にあって、一服の清涼剤のような事件であった。

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