2025年4月14日月曜日

法律相談ー確率的な未来予測と行動指針(4)

 

 ある離婚事件で、ある弁護士と引き合いになった。相手方が妻である原告の依頼を受け、当方が夫である被告の依頼を受ける事件だった。このような場合に引き合いになるという。

 ある弁護士は知らない弁護士だったのでホームページを拝見すると、離婚専門弁護士を名乗っておられた。

 弁護士業は国民の財産を守る公的な仕事なので、自由業ではあるがいろいろな規制をかぶっている。医者とちがって、あまり専門性を標榜してはならない。少なくとも昔はそのように言われていた。いまもそうではなかろうか。

 不貞があり、慰謝料を1000万円請求されていた。不貞慰謝料の相場は200万円である。それにもかかわらず1000万円も請求してくるというのはどうなのだろう?依頼人の強い希望なのだろうか?

 最善を期待しつつも最悪に備える立場からすれば、受任時に「ご希望どおりに1000万円を請求しますが、裁判の相場は200万円ですよ。裁判官から200万円で和解打診があると思いますが、その時はその金額を飲まざるを得ませんからね。」という説明を行う。

 本件でも相手方弁護士は離婚専門弁護士を標榜しているのであるから、当然これくらいの説明は行っているだろうと思い、応戦した。

 しばらく主張をかわした後のある期日において、案の定、裁判官は慰謝料200万円で和解するよう打診した。

 次の期日、相手方の弁護士は「和解打診の内容を説明したが、依頼人の納得を得ることができなかった。」と報告した。裁判官は、困ったですねぇという顔をして、再度200万円で説得するよう相手方弁護士に依頼した。

 次の期日、相手方の弁護士は「和解打診の内容を説明したが、依頼人の納得を得ることができなかった。」と報告した。裁判官は、困ったですねぇという顔をますます険しくして、再度200万円で説得するよう相手方弁護士に強く指示した。

 さらに次の期日、(以下同文)。

 この経緯からみるかぎり、相手方弁護士は、受任の際、1000万円の慰謝料を請求することしか説明していなかったと思われる。離婚専門を名乗るまえに、弁護士としてのイロハができていないといわざるをえない。

 着手金は請求額(正確には、事件の経済的利益の価額)をもとに算定されるので、1000万円を前提に計算したとすると200万円の5倍になる。しかし、これでは詐欺と言われてもしかたがない。

 最近は、弁護士の営業ツールとしてホームページが欠かせない。また競争が激化しているので、経営コンサルタントに依頼したり、ホームページ作成業者に依頼したりする弁護士も増えている。ほとんどそうなっているかもしれない。業者の言いなりに宣伝をしているので、中身が伴っていないことも多い(たいへん失礼ながら)。

 結局、これにより被害を被るのは利用者である国民である。利用者である国民はホームページに書いていることを信じるほかない。口コミがあるではないかというかもしれないが、知っている事務所の口コミを拝見するかぎり、あまり実態を反映していないように思う。

 弁護士を増員して競争するようになれば、サービスが向上し、向上できない弁護士は市場から脱落し、弁護士サービスはさらに向上する・・・と言われていたのだが。どこでどうなってしまったのだろう。

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