2024年9月13日金曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(21)


  山頂。快晴。いままで登ったなかで最高の天気だ。周囲ぐるりと360度の景観が楽しめる。


 北はこれまで歩いてきた山々、旭岳をはじめとする大雪の山々を望むことができる。


 東は火口跡。その向こうは東大雪の山、石狩岳かな?


 南は十勝連峰。手前から美瑛岳、十勝岳、富良野岳が見えている。その向こうには五郎や純の家もあるはずだ。


 名残はつきないが、根がはえてしまわないうちに下山することにしよう。南に下る。手前からトムラウシ公園、前トム平、前トムラウシ山、コマドリ沢の谷、カムイ天上、短縮登山口駐車場、新得の集落と下山ルートがすべて見えている。こちら側がこれほどくっきりと見えたのは初めてだ。

2024年9月12日木曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(20)


 北沼でのひとり追悼を終え、トムラウシ山の登りにとりかかる。きょう5つ目の登り。写真右のほうが目指すべき山頂だ。直線的に登れそうだが、上部は巨岩がゴロゴロしており、下手に行くと行き詰まる。いつも道迷いしてしまう。


 すこし高度を稼いだところで振り返る。北沼が美しい。


 岩場にエゾノツガザクラが咲いている。


 さらに高度を稼いだ。北沼の向こうに、化雲岳、五色岳、忠別岳、白雲岳、北海岳、間宮岳、旭岳。3日間で歩いてきた広大な絶景、全40kmが眼前にひろがる。感慨もひとしおだ。


 山頂。標高2141m。日本百名山。カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)。好天にめぐまれた。感謝。

2024年9月11日水曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(19)

 

 ロックガーデンを登りあがったところ。上部はゆるやかなピークをなしている。


 足もとにはイワウメのお花畑がひろがっている。


 さらに進むと、トムラウシ山のピークが頭をだした。いよいよだ。


 ピークを越すと、トムラウシ山の全景と北沼がみえた。美しい。地上の楽園かと思える。しかしここを通過する際、いつも厳粛な気分になる。ここは山の美しさと厳しさが表裏一体であることを教えてくれる場所だから。

 2009年7月16日、トムラウシ山は悪天に見舞われ、ツアーガイドを含む登山者8人が低体温症で亡くなるという大量遭難事故が発生した。

 遭難の経緯は『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(羽田治ほか・山と渓谷社刊)に詳しい。ウィキペディアでも概略を知ることができる。是非一読してほしい。


 遭難したグループはこんかいの旅程とおなじコースを進んできていた。旭岳温泉→旭岳→白雲岳避難小屋(泊)→忠別岳→化雲岳→ヒサゴ沼避難小屋(泊)→北沼。

 16日10時、一行は北沼に到着した。そのとき、大雨の影響で沼は様相を一変していた。晴れていれば地上の楽園であるが、悪天となれば沼の水は増水し、沼の左手から川となって流れ出していた。

 一行はなんとかしてこの川を渡ったが、長い時間を要し、みなずぶ濡れになり、吹きさらしの場所で体温を奪われてしまう。渡渉を援助していたガイドも川で転んでずぶ濡れになってしまった。ガイドは3人いたのだが、このため指揮系統がバラバラになってしまった。


 10時30分ころ、このあたりで68歳の女性が行動困難となった。その対応にガイドたちが追われ、他の参加者たちも1~2時間ここで待機させられた。以後、参加者個々としてもツアー団体としても行動不能になっていく。・・・

 この日、沼に到着したのは2024年6月30日7時29分。天気は快晴。だが風は強かった。ビルの横にビル風が吹くように、風のとおり道になっているようだ。

 2009年の時点で68歳と聞くとずいぶん高齢のように思えたが、いまとなってはほぼ変わらない年齢になってしまった。他人ごとではない。亡くなった方々のご冥福を祈った。

2024年9月10日火曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(18)

 

 ヒサゴ沼分岐からは、この坂を登る。きょう2つ目の登りである。


 ジムカデ。花に癒されながら登る。



 坂を登ると、日本庭園がひろがる。まさしく造化の天工、神なる自然が創りあげた自然庭園である。石とハイマツのとりあわせが美しい。かつ、広大。向こうにはトムラウシの王冠が見えている。
 


 東側に大きな雪渓があるところまで来た。ことしは何もいない。ふう。前回来たときには、ヒグマとでくわしたところだ。


 ヒグマのお出迎えはなかったが、代わりにカッコウが出迎えてくれた。野鳥には詳しくないが、自分で名乗っていたので間違いなかろう。


 ほんとうに美しい。雪渓が解けて池塘をたたえている。トムラウシ山から来たという人が途中でキタキツネとリスにであったという。いいな。


 日本庭園をすぎると、大きな岩がガレた登りだ。きょう3つ目の登り。
 

 さらなる難所、ロックガーデン。きょう4つ目の登り。大きな岩がゴロゴロしていて、どこをどう登ったらよいか分からない。
 

 途中、イワウメが疲れを癒やしてくれる。


 ようやくロックガーデンの上部に達した。トムラウシ山から来たというグループとすれ違う。振り返れば、化雲岳、五色岳、忠別岳、旭岳から北海岳まで大雪山の山々を望むことができた。

2024年9月9日月曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(17)

 

山中3日目、はや最終日の夜明けである。奥で寝ていた男性は2時30分ごろ出発していった。山の上でご来光をあおごうとすれば、そのような時間の出発となる。夜の行動はリスクも多いが、ご褒美も多い。


 こちらは避難小屋で日の出を迎えた。それでも3:52。夏の北海道の朝は超早い。

 太陽の方向には山すそがあって、残念ながらお日様は直接は見えない。沼の向かい側の山肌を赤く染めていくのがみられるだけである。


 さあ出発だ。避難小屋は、お鉢のような地形の底にあるので、いきなり坂を登る必要がある。例年はこの坂も残雪で覆われているのだが、ことしはもう地表が露出している。そしてお花畑になっている。この写真で見ると、雪渓はすくないようだが、それでも・・・


 アオノツガザクラ 


 雪渓をだいぶ登ってきた。下からみると、少なく見えた雪渓も上からだとこのボリューム。軽アイゼンを使えなかったので、ツボ足で苦労した。ヒサゴ沼が遠ざかる。その向こうに見えているのは東大雪の山々だ。


 上部からみると、ヒサゴ沼はこの形。ひょうたん型をしている。


 雪渓を抜けると、大きな岩がゴロゴロしている。向こうの鞍部にヒサゴ沼分岐の標識が見えている。分岐を右へ行けば化雲岳、左へ行けばトムラウシ山である。


 分岐の周辺はまたまたお花畑が広がっていた。まずはエゾノツガザクラ


 イワヒゲ


 イワウメ


 チングルマ

2024年9月5日木曜日

大雪山・旭岳~トムラウシ山縦走(16)

 

 化雲岳登りのつづき。遠くからは小さなピークと思えるが、近づくにつれ高くなっていく。大雪山の広大さがなせるマジックか、疲れのせいか。


 ようやく化雲岳の山頂だ。標高1954.5m。発音はカウンダケではなく、正確にはクワウンダケだ。なぜなら、山名が当山を源流とするクワンナイ川に由来するからだ。クワウンナイとはアイヌ語で、「杖・川」で、杖が必要な険阻な川の意らしい。


 北を望むと、化雲沢川が削った谷が深く刻まれ、その向こうに旭岳をはじめとする大雪の山々が美しい。右手には忠別岳だ。旭岳温泉~旭岳~北海岳~白雲岳~忠別岳~五色岳をめぐって化雲岳に到達したということは、つまり、旭岳の左下からこの大きな谷を時計回りにぐるっと歩いてきたことになる。


 南を望むと、トムラウシ山だ。明日はあの頂にたたなければならない。こうしてみると、なだらかで楽勝な印象。だがそうではない。岩ゴロゴロの登り下りが待ち構えている。

 山頂でしばらく休憩。いつまでも広大な景色にひたっていたいが、目的地のヒサゴ沼避難小屋まであとすこし。しかも下りのみだ。がんばろう。


 くだっていくと、お花畑が広がっていた。神々が遊ぶ庭だ。


 チングルマの群落だ。


 振り返ると、化雲岳のピークが見えていた。


 さらに下ると大きな雪渓。その向こうにヒサゴ沼が見えはじめた。


 ことしは雪がすくない。例年だとこのあたりは雪渓に覆われているが、もう木道が露出している。アイゼンが故障していたので心配したが、おかげで難なくくだることができた。


 ヒサゴ沼についた。美しい。ヒサゴ沼というぐらいだから、上からみるとヒョウタンの形をしている。


 避難小屋、山中2日目のきょうはここで宿泊だ。大自然の脅威から守ってくれるシェルター、ほっとした。


 振り返ると、沼が美しく輝いていた。キャンプをしている人もいる。さあ水場までいって水汲みをして、夕飯のしたくをしよう。