訪問看護ステーションを営む会社の顧問弁護士をしている。数十人のスタッフが所属する、訪問看護ステーションとしては比較的規模の大きな会社である。各種研修会のほか、サマーパーティ、社員旅行、忘年会などにも呼ばれて、とても仲よくしてもらっている。
今般、運営規程、重要事項説明書及び契約書の改正について意見を求められた。身体的拘束の原則禁止、虐待防止、事業継続計画の策定に関し、法令の改正がおこなわれたので、それに適合させたいというもの。
あわせて新任の幹部にたいしてその解説をしてほしいというので、研修をおこなった。
顧問になって10年以上経つけれども、訪問看護ステーションそのものに関わる研修ははじめてだ。
われわれ法律家は「六法全書」というぐらいだから、六法については理解しているし話ができる。六法とは憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法だ。
よく「六法全書を全部暗記しているんですよね」という質問を受けるが、そんなことはあるはずがない。手もとの六法全書は標準サイズだが、それでも3600ページある。細かい文字でビッシリ埋まっている。こんなものを記憶できるはずはない。
われわれは六法全書のどこを読めば何が書いてあるかをおよそ理解しているだけである。いわゆる体系的理解というやつ。これができると、何がどこに書いてあるか、どこを調べれば分かるかがだいたい分かる。法律家をするうえでは、それで十分間に合う。
医療法や医師法などの医事法はいわゆる行政法である。厚生労働省が病院や医師を指導・監督するための法律である。ふだん裁判所で使用することはない。六法ではないから、一から勉強する必要がある。
訪問看護について勉強してみて、びっくりしたのだが、びっくりするほど分かりにくい。まず「訪問看護事業法」といった基本法が見当たらない。老人保健法、健康保険法、介護保険法などに断片的に規定があるだけである。
いちばん基本となるのは健康保険法だろうが(介護保険法が優先されるのであるが)、同法も88条までいかないと書いていない。初学者が訪問看護を勉強しようと思い立っても、ふつう88条まで読み進められないだろう。
しかも、88条に何が書いてあるかというと、「厚生労働大臣が指定した訪問看護事業者が行った訪問看護には健康保険から療養費を支払うよ」ということが書いてあるだけである。健康保険法という法律を読んだだけでは、訪問看護事業とは何なのか、訪問看護ステーションとは何なのかはとても分かりにくい。
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