顧問先から依頼を受けた身体的拘束の原則禁止、虐待防止、事業継続計画の策定に関する条項を運営規程、重要事項説明書及び契約書に反映させることになれば、「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年3月31日)(厚生省令第80号)を参照しなければならない。
同基準は4項目からなっていて、第一章第一条は、基本方針を定める。
指定訪問看護の事業は、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、その療養生活を支援し、心身の機能の維持回復を目指すものでなければならない。
健康保険法という建物の地下2階まできて、ようやく理解しやすい条項に出会うことができた。地上1階、地下1階では抽象画が1枚かかっているだけで、何のことかよく分からなかったが。
訪問看護事業、訪問看護ステーションに関する法令(法律と厚生労働省令)はこれほど分かりにくい仕組みになっている。
歴史的にも、訪問看護事業法という基本法が制定されないまま、寝たきり老人のためであるとしてまず老人保健法の片隅にそれに関する事項が記載され、ついで一般の人にも必要であるとして健康保険法の片隅にこれが記載され、さらに介護保険法の制定に伴いその片隅にも導入された。
それぞれの法律を読んだだけでは何のことやらよく分からず、施行規則や「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」等の省令まで読んでようやく何のことか理解できる仕組み。
なぜこうなっているのか。これは推測だが、在宅医療を推進するうえでの厚生労働省の深謀遠慮な作戦だったのかもしれない。
在宅医療は、病気になっても、病院ではなく、自分の家で家族に囲まれいままで通り生活しながら治療を受けたいという国民の切なる願いに応えるという王道の目的がある。重ねて大きな声ではいいにくいが、増大する医療費の削減に資するという「副次的な」「隠された」目的もある。
訪問看護を含む在宅医療を推進する前の医療は、入院医療・病院での医療がすべてだった。膨大な数の病院、膨大な数の病院経営者とスタッフがそれをにない、それによって職と収入をえていたのである。
在宅医療を推進するとなれば、それら病院経営者やスタッフの仕事と収入が院外に流出し、大幅に減ってしまうことになる。
もし厚生労働省が、正面きって訪問看護事業法や在宅医療推進法を制定して、大々的に在宅医療を推進すると言い出せば、それまでの既得権益を有する勢力に反対されて潰されていたかもしれない。
それを寝たきり老人のためと称して老人保健法の片隅に在宅医療のことをちょこっと記述することからはじめ、すこしずつ領域を広げていった・・・。
・・・のかもしれない。小さく産んで大きく育てる作戦。霞ヶ関の常套手段だ。このように理解すれば、分かりにくい訪問看護事業の仕組みもすこしは分かったような気がする。
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