「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年3月31日)(厚生省令第80号)のなかから、身体的拘束の原則禁止、虐待防止及び事業継続計画の策定を運営規程、重要事項説明書及び契約書に反映させるのに必要な部分を抜粋する。
第四章 運営に関する基準
(内容及び手続の説明及び同意)
第5条 指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、あらかじめ、当該指定 訪問看護を受けるために申込みを行う者(以下「利用申込者」という。)又はその家族に対し、第21条に規程する運営規程の概要、看護師等の勤務の体制その他の利用申込者の指定訪問看護の選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。
(指定訪問看護の具体的取扱方針)
第15条 看護師等の行う指定訪問看護の方針は、次に掲げるところによるものとする。
三 指定訪問看護の提供に当たっては、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。
四 前号の身体的拘束等を行う場合は、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。
(令和六年厚生労働省令35一部改正)
(運営規程)
第21条 指定訪問看護事業者は、指定訪問看護ステーションごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程(以下「運営規程」という。)を定めておかなければならない。
七 虐待の防止のための措置に関する事項
(令和六年厚生労働省令35一部改正)
(事業継続計画の策定等)
第22条の2 指定訪問看護事業者は、感染症及び非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問看護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下この条において「事業継続計画」という。)を策定し、当該事業継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
(以下、略)
(掲示)
第24条 指定訪問看護事業者は、指定訪問看護ステーションの見やすい場所に、運営規程の概要、看護師等の勤務の体制その他の利用申込者の指定訪問看護の選択に資すると認められる重要事項を掲示しなければならない。
2 指定訪問看護事業者は、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない。(令和六年厚生労働省令35一部改正)
本基準は、訪問看護ステーションのミニマムスタンダードを定めるもの。これを充たせば、Cランク、最低限、訪問看護ステーションとして認めましょうという基準である。
本基準は平成12年に定められた。それで終わりではなく、世の要請に応じて改定が繰り返されてきた。かくて令和6年の改正が、身体的拘束の原則禁止、虐待防止、それらの運営規程、重要事項説明書への反映とウェブサイトへの掲示なのである。
厚生労働省は、他の省令において、Aランク、Bランクのステーションとなるための基準も定めており、それらの基準をクリアすればより高額な療養費(診療報酬)を受領できる仕組みになっている。ニンジンをぶらさげて馬を走らせる感じだ。
本来、自由経済のもとでは、多数のサービス供給者が価格競争を通じてサービスの向上を図っている。したがって、厚生労働省によるこのような基準設定は必要ない。基本的に市場にまかせておけばよい。
しかし日本は世界に誇る保険医療制度を確立・維持している(WHOによりNo1と認定されている)。日本国民は世界の人々がうらやむようほど平等な医療を受けられる仕組みになっている(もちろん例外はある)。そこに市場は存在せず、価格競争が行われない。ほおっておけば、みな現状に甘んじ向上心が働かない。
そこで厚生労働省がこのようなミニマムスタンダードを定め、それを適宜改正してレベルアップを図っている。もってわれわれの生命・健康に直結する看護がきちんとなされるよう配慮がなされているのである。
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